原稿査読で著者にどこまで修正を依頼すべきか

もう20年近く前から役員に名を連ねている液体クロマトグラフィー研究懇談会(略して液クロ懇、日本分析化学会の下部組織)では、もう10年以上前から、毎年(多い時には年に2回)HPLCLC/MSに関する専門書を編集・発刊しています。執筆とその原稿の査読に関わる人の多くは、私を含めた役員達です(執筆者は外部の場合あり)。先週も、今秋~来年辺りに発刊される専門書の査読会が行われました。私は7名の執筆者の1人であり、査読会にも参加し、他の執筆者の原稿を査読しました。

 

今まで液クロ懇で編集してきた書籍達は、こちらからご覧頂けます。

 

査読で重要のポイントは以下の4点だと思います。

  1. 学術的、理論的に間違っている記述内容がないか。
  2. 日本語として成り立っていない文章はないか(文法的に問題はないか)。
  3. 読みにくい構成になっていないか。
  4. “てにをは”の使い方はおかしくないか

 

1人分の原稿を複数名の人がグループになって査読し、これらに当てはまる内容が原稿に見つかった場合、グループの代表者が著者に修正を依頼します。

 

1に関しては最も重要で、専門書に間違った記述があれば大問題なので、少なくとも現状(査読をする時点)で正しいと一般的に考えられている内容を書く必要があります。液クロ懇役員では、MS(質量分析)の専門化は少数(役員の5 %以下)なので、MSに関する記述に関しては、私が特に細かくチェックする様に心掛けています。

 

2については、口語的に文章を書いてしまうと主語が抜けてしまうなど、日常的に不特定多数の人向けの文章を書きなれていない人は、文法的に問題のある文章を書いてしまうことがあります。日本語の会話は主語がなくても成立してしまうので、口語的に文章を書く癖がついてしまっている人は、なかなかこの問題は無くならないですね。

 

3については、改行したり段落を変えたりせず、あるいは適宜図を入れるなどの工夫をせずにダラダラと長い文章を書いてしまう等、読みにくい文章構成になってしまっている原稿の事です。

 

4については2や3とも関係しますが、書いている本人は以外と気づかないことが多く、複数名で査読して修正意見を出す事が重要だと思います。

 

これら4点については、査読段階で可能な限り漏れが無い様にチェックする必要があります。

 

一方で、これらに当てはまらない内容、“間違えでは無いし特に大きな問題では無いけど、こう言う書き方の方が好きだから修正して!”みたいな、つまり個人的な好みで著者に対して修正意見を出す事は、私は著者のオリジナリティーを無視する事にもなる可能性があるので、査読者としてはやらない方が良い行為だと思っています。でも、こう言う事をやる人って、実は結構います。良いか悪いかは別にして、私は“書籍の質に問題の無い範囲であれば著者のオリジナリティーは大切にするべき”と考えています。“例え小さな文言1つであっても”です。

 

これは、今回の査読会で私の原稿に対して出てきた修正意見の一例ですが...

「帯電液滴生成のためには、試料は...に溶解する必要がある。」

から

「帯電液滴の生成には、試料は...に溶解する必要がある。」

と言う文章に修正して欲しいという依頼がありました。

 

これ、勿論修正意見が悪いとは思いませんが、私的にはどっちでも大差無いと思います。どっちに転んでも大差無い、大して重要で無い修正を要求してくる査読者って、私としてはナンセンスだと思います。私は、この様な査読意見は絶対に出しません!!

 

まぁ、“こう言う書き方もあるんだなぁ”と普段は自分では書かない文章を認識できる機会が得られるので良い面もあるのですが、“こんなのどっちでも変わらないじゃん!”とチョッとだけ頭にカチンと来る場合もあります。

 

こう言う事って、会社等の組織内でも結構起こりますよね。私も以前勤めていた会社で、私が書いた文書に対して、上司から今回と似たような指摘をされた記憶が数えきれない程あります。本人のために良かれと思った指摘が、自分の好みを相手に押し付けるだけって事も有り得ます。

 

著者のオリジナリティーを大切にする意識をもつこと

 

私は重要だと思います。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
エムエス・ソリューションズ株式会社
http://www.ms-solutions.jp/
住所:〒187-0035 東京都小平市小川西町2-18-13
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇