第66回質量分析総合討論会参加_軟X線重畳ESIに関するポスター発表

66回質量分析総合討論会が、5/15173日間、大阪のホテル阪急エキスポパークにおいて開催されました。今年はプロテオーム学会年会との共同開催であり、プロテオーム学会にも参加する場合は4日間でした。参加者は、800名を少し超えた程度だったようです。

 

私は群馬高専の卒業研究で質量分析を始めて以来、すっと質量分析学会の会員です。今の会社を設立してからは、学会への参加は費用対効果を常に考慮し、それが低いと思われる場合には参加を見合わせています。前職の時には、質量分析総合討論会、BMSコンファレンス、医用MS学会、分析化学会年会、分析化学討論会、薬学会、液体クロマトグラフィー研究懇談会(略LC懇、年に10回開催)など、大小含めて年に10回以上学会等に参加していました。今は、毎年必ず参加するのは、今回の質量分析総合討論会とLC懇に2-3回のみになっています。

 

今回の討論会では、ポスター発表を2件行いました。ここでは、その1件、初日に行った「軟X線重畳ESIによるイオン化の基礎検討」についてご紹介します。

 

X線重畳ESIとは、コンベンショナルESIで生成した帯電液滴に軟X線(平均波長帯0.25 nm)を重畳照射する新しいLC/MSイオン化法です。ESIでイオン化し難いある種の低極性化合物に対して、軟X線を重畳する事でイオン化効率の向上が認められています。図1は、軟X線重畳ESIの概念図です。

ESI+X_source

 

この技術、オリジナルは他の会社なのですが、その会社で開発を継続する予定が無いと言う事で、私の会社が協力して開発を進めています。とは言えこちらは役員2人だけの超零細企業、実験用のLC-MSを持っていませんし、開発費も無いですから、その会社のLC-MSのスケジュールが空いている時に、年に数回装置を借りて実験を継続しています。

 

討論会では、以下に示す6種類の化合物について、ESIのみ(上段)、ESI+X線(中段)、軟X線のみ(下段)の比較データを示しましたが、ここでは、1,2-benzanthraquinone, 2-methyl hexanone, progesterone3化合物のデータを示します。

ESI+X_Data_1,2-benzanthraquinone

ESI+X_Data_2-methyl cyclohexanone

ESI+X_Data_progesterone

何れの化合物においても、ESIのみ及び軟X線のみに比べて、 ESI+X線では、試料化合物の[M+H]+強度が著しく増加している事が分かります。progesteroneは特に顕著で、ESIでは全く分析種由来のイオンが観測されていませんがESI+X線(および軟X線)では、[M+H]+および[M+H+aceton]+が顕著に観測されています。現在までの実験では、>C=O以外の極性基を持たないカルボニル化合物に、ESI+X線のイオン化効率向上の効果が認められています。

 

X線光源からの光は、その性質から溶離液である水やメタノールに吸収されると考えられます。水が光を吸収して励起されたH3O+が生成し、ESIではイオン化されなかった分析種分子に対してプロトン供与する働きをしていると考えられます。

 

尚、ペプチドや多くの医薬品など、ESIのみで十分に高いイオン化効率を示す化合物群に対しては、軟X線重畳の効果はありません。また、軟X線重畳によって、ESIで生成したイオンに熱分解等の負の影響が全くでない事が確認されています。

 

どんな構造の化合物に効果があるのか、まだまだ実証実験が全く足りていません。共同研究のような形で、ある程度定期的にこのイオン源を装着してLC-MSを使わせて頂ける機関、あるいはイオン源の評価をしてくれる企業様等を探しています。

 

ご興味ある方は、ホームページのお問合せからご連絡をお願いします。

 

 

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