エレクトロスプレーでイオン化できる化合物は?

LC/MSのイオン化法として代表的な2法、エレクトロスプレーイオン化法(electrospray ionization, ESI)と大気圧化学イオン化法(atmospheric pressure chemical ionization, APCI)、以下の図のような基準での使い分けが一般的です。

ESIとAPCIの使い分け

 

中~高極性化合物はESI、低~中極性化合物はAPCI、概ね正しいですし、ファーストチョイスとしては良い指標だと思います。しかし実際には、多くの人が描いているイメージより、ESIAPCIも沢山の化合物をイオン化出来ます。また、移動相溶媒(インフュージョンによる連続導入の場合は試料溶媒)についても、ESIには極性溶媒が必須であると思われがちですが、必ずしもそうではありません。流石にヘキサン100%ESIによる測定は難しいですが、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエンなどは100%でもESIに使えます。また、そのような溶媒にのみ溶解する化合物(極性溶媒に不溶)は、イオン化効率は高くはありませんが、ESIでイオン化するものが結構あります。低極性溶媒をESIに使用する場合、例えばそれがLCの溶離液であれば、ポストカラムから溶離液および分析種が溶解する程度の極性溶媒を添加する方法が一般的ですが、極性溶媒(水酸基に対して反応性をもつ化合物など)によって分解してしまう化合物もあるので、そのような方法を用いる事が出来ない場合があります。

 

多環芳香族化合物やある種の金属錯体などは良い例だと思います。多環芳香族化合物は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン辺りの低分子ではESIで殆どイオン化しませんが、例えばこんな構造であればESI[M+H]+が観測されます。

Rubene

 

また、金属錯体など熱的に不安定な構造をもつ化合物の場合、ESIの脱溶媒の過程で熱分解を起こしてしまうので、脱溶媒温度を下げる事でイオンが確認できる場合があります。極端な例はコールドスプレーですが、ここまで積極的に低温にしなくても、脱溶媒の温度を室温程度まで下げれば高温条件では検出できなかった目的イオンが観測できるようになる場合があります。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
エムエス・ソリューションズ株式会社
http://www.ms-solutions.jp/
住所:〒187-0035 東京都小平市小川西町2-18-13
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇