Ambientイオン化に対する違和感解消

質量分析をやっている人で、Ambientイオン化をご存じの方は多いと思います。Ambientは環境という意味で、Ambientイオン化は、装置の設置環境下で、試料の前処理を殆ど必要とせず、試料そのものの状態からイオンを生成させるイオン化のことです。Ambientイオン化の代表例と言えば、何と言ってもDART(Direct Analysis in Real Time)とDESI(Desorption Electrospray Ionization、脱離エレクトロスプレーイオン化)でしょうね。

 

しかし私は、このAmbientイオン化と言う専門用語に対して、以前から違和感をもっていました。何故なら、イオン化の名称はイオン化原理に基づくものであるべきと考えているからです。EI, CI, FAB, FD, ESI, APCIなど、全てイオン化原理に基づく名称がついています。一方Ambientイオン化は、特にイオン化原理とは直接関係ない名称です。特にDARTでは、用いられているイオン化はAPCIです。DESIの場合には、Electrosprayが名前に入っているから良いのですが。

 

最近そんなことを思いながら、大気圧イオン化の事を考えてみました。大気圧イオン化 (API, Atmospheric Pressure Ionization)は、大気圧でイオンを生成するイオン化の総称で、一般的には、ESI (Electrospray Ionization), APCI (Atmospheric Pressure Chemical Ionization), APPI (Atmospheric Pressure Photo Ionization)が含まれます。何れも、LC/MSに用いられているイオン化法です。大気圧イオン化は総称なので、その名前自身にはイオン化の原理的な意味は含まれません。

 

それと同じような視点でAmbientイオン化を考えれば、これもDARTやDESIなどAmbientな状態でイオンを生成するイオン化の総称なので、それ自身の名称にイオン化原理が含まれなくても構わないと考えたわけです。それで、Ambientイオン化に対する違和感はめでたくなくなりました。誰に話たわけではありませんが、この問題は自問自答して自己完結しちゃいました。でも、DARTに関しては、やっぱりイオン化というのは違和感が残ります。DARTに関しては、名前の中にもAnalysisが含まれていることもあり、Ambientイオン化ではなく、Ambient質量分析というべきでしょう。

 

 

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エムエス・ソリューションズ株式会社
代表取締役 髙橋 豊
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