第9回LC/MSワークショップ開催報告

10/26-27、浜名湖ロイヤルホテルで第9回LC/MSワークショップが開催され、今回も世話人として参加してきました。この会は、主に製薬企業のLC/MS現場で問題になっている現象に対して、様々な視点から議論することで相互理解を深めたり問題解決の糸口を見つけたりすることを狙い、2009年に立ち上がったディスカッショングループです。今回の開催趣意書はこちら。日本ウォーターズ株式会社が事務局のサポートをしてくれていますが、参加者がウォーターズユーザーに限定されるようなことはありません。

参加者は主に製薬企業でLC/MSを使って研究している中堅研究者と、LC/MS関連のアカデミア、その他でトータル36名でした。私は、横浜市立大学に非常勤の籍があるので、一応アカデミア側の参加者という位置づけ。

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ディスカッションの様子。コの字に机を配置して、全員参加型でディスカッションします。

 

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初日夕方の休憩時間に、浜名湖が見える場所までランニング!

 

 

ここ数年は、ESIにおけるマトリックス効果、フラグメンテーション、タンパク質の定量分析、の3本が主テーマですが、今回もこの3本柱で数人の演者に話題提供をしてもらい、それに対して突っ込んだディスカッションをしてきました。昨年の様子はこちら。

 

 

マトリックス効果に関しては初回からずっと議論していて、原因と分析現場での対処法については概ね議論が出尽くした感があります。原因については以前のブログでも紹介していますが、マトリックス成分の物性(プロトン親和力、界面活性、疎水性)、初期の帯電液滴サイズと電荷密度、から概ね説明できます。対処法についても、試料の希釈、試料前処理、カラム分離、分離モードの変更、イオン化モードの変更、ESIであればダウンサイジングなど、現場ではそれぞれの方法で解決策を模索しており、概ね落ち着いてきた印象です。

 

しかし、汎用的に使われているコンベンショナルESIでマトリックス効果が起こるという現象自体は何も変わっておらず、これをこのまま諦め対処法を駆使して使い続けるのか、コンベンショナルESIの汎用性を保ちつつマトリックス効果を低減させる新たなイオン化法を開発するのか、弊社で開発中の新規LC-MSイオン源も実はマトリックス効果低減を期待しているのですが、今のところ別の効果(ESIだけではイオン化し難い化合物を+αのエネルギーでイオン化できる)で使えそうな感じです。

 

フラグメンテーションのセッションでは、今回理研の津川氏に“フラグメンテーション解析支援ツール”の開発の話しをして頂きました。MS-FINDERというツール、私も使っていますが、なかなか良いです。本当は、MS/MSにより得られたマススペクトルから化合物の構造を組み立てられると良いのですが、それは現状不可能です。その障害になっているのは、主には転位反応だと思います。LC-MS/MSでは殆どの場合低エネルギーCIDによる開裂が用いられますが、この開裂方法では転位反応を伴う開裂がしばしば起こります。マススペクトルから、“このイオンは転位反応によって生成したイオンか単純開裂によって生成したイオンか”を見分けることは出来ません(以前ブログに書いたMIKESを使えば可能ですた)。また、高分解能MS/MSによってイオンの元素組成は分かるとしても、その構造まで一義的に決められるのは、かなり小さなm/z値のイオンに限定されます。現時点では、MS-FINDERのように、化合物データベースに登録されている化合物の構造から生成され得るフラグメントイオンを予測し、それを実測のスペクトルと比較して構造を推定するという方法が最も現実的な方法でしょう。

 

今回は、実際の仕事でフラグメンテーションの解析を行っている人が少なかったのか、余り突っ込んだ議論にはなりませんでした。

 

毎回限られた人数で深いディスカッションができる良い会ですが、今回は初参加の方も積極的にディスカッションに参加してくれて、全体的にとても盛り上がったと思います。このワークショップ、参加者を広く募集することはしておらず、専ら世話人からの声かけによって参加者を募っています。次回は10回記念大会です。

 

 

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