質量分析コンサルティング

質量校正(マスキャリブレーション)が上手くいかない例

先日、LC/MS技術指導で初めてご訪問したお客様の所で、23日質量校正が上手くいかないと言う問題が起きていました。担当者様は、かなり長いLC/MS経験をもつ方でした。質量校正試料は何回か作り直したとの事。

 

早速、操作しているとことを見せて頂きました。

 

質量校正試料のマススペクトルを見て、問題は直ぐに分かりました。質量校正試料以外の、夾雑物由来のイオンがメインピークとして観測されており、質量校正試料由来のイオンのピーク強度が低くなってしまっていて、システムがピークを認識できていなかったためです。

 

質量校正試料を見せて頂きましたが、プラスチック製の遠沈管で調製・保管されていました。プラスチック製品の全てが悪い訳ではありませんが、質量分析で使う事を想定していない製品が多いようで、内壁からの溶出物がしばしば問題になります。

 

今回も、今まで私が使った事が無いプラスチック製の遠沈管だったので、先ずそれを疑い、ガラス製のバイアルで再調製して頂いたところ、夾雑物由来のイオンは消失し、質量校正試料由来のイオンが綺麗に観測され、質量校正も問題なく行う事が出来ました。

プラスチック製品が質量分析に適しているか否かは、正直使って見ないと分かりませんが、プラスチック製の遠沈管なら私はこの製品は安心して使えます

 

 

 

相談されてから問題解決まで約2時間でした!

 

何日間もご自身で苦労せず、メーカーさんなり私の会社なりに相談して頂ければ、もっと早く解決したのにと思います。

 

こう言う問題を抱えながら質量分析計を使っている企業や大学って、表面化していないだけで結構あるのだと思います。問題を問題として認識できるか否かは、担当者にどれだけ経験があるか、もっている引き出しの数に依存してきます。経験の少ない人が質量分析計の担当をしている場合、無理に自分達だけで問題を解決しようとせず、私達プロに頼って頂きたいと思います。また、問題を問題として認識出来ていないケースもあると思いますので、私は“質量分析の棚卸”を提案しています。

 

 

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エムエス・ソリューションズ株式会社
代表取締役 高橋 豊
http://www.ms-solutions.jp/
住所:〒187-0035 東京都小平市小川西町2-18-13
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東京以西の大学での質量分析に関連する国プロ研究サポート

今月から、東京以西のとある大学で、国プロ関連の研究を手伝う事になりました。

来年の3月で終了予定らしいのですが、最近担当の職員さんが急に他大学に移動になってしまい、かといって今更新しい人を雇う事も出来ず、リーダーの先生は大変困っていたとの事。

この先生とは以前からの知り合いですが、少し前SNSに“会社の仕事が減ってしまって暇”と言う主旨の投稿をしたら、“仕事を手伝って欲しい”と連絡があり直ぐに話しがまとまりました。

 

一寸遠いので、基本的には12日で毎週訪問予定。限られた予算内で出来るだけ成果を挙げたいのとアカデミックプライスも考慮し、今回はかなり安い額で引き受けました。もちろん質量分析に関係した内容ですが、私の最も得意とするLC/MSからは外れるので、自分自身の勉強の為にもなると考えれば、安い額で引き受けるのは投資の意味にもなります。

 

来週以降、基本的に毎週月・火は東京を離れます。どうなるか、やって見ないと正直なところ分かりませんが、成果を挙げられるように全力を尽くします。

 

今回の様に、“質量分析に関して一時的に仕事を手伝ってくれる人が欲しい”などとお困りの場合、一日だけのご依頼からお引き受け致します。ホームページの問い合わせからお気軽にご連絡下さい。

 

 

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マススペクトルのm/z値と分子の質量・分子量との関係について

以前に同様な記事を書いたと思うのですが、マススペクトルで観測されたイオンのm/z値から得られる元の化合物分子の質量情報について、誤解されている方がまだまだ多いので、改めてまとめておきたいと思います。

 

 

先ず、マススペクトルで観測されたイオンのm/z値から元の化合物の分子量情報が得られると思っている人が非常に多いですが、これは条件に依っては正しくありません。特に、低分子化合物については、通常分子量では無く分子の質量に関する情報が得られます。分子の質量と分子量はどう違うのか? 両者の違いを明確にしておく必要があります。

 

化合物を構成する元素には、多くの場合同位体が存在します。ここでは、天然存在比が比較的多い安定同位体のみ取り上げます。例えば炭素では12C13C、水素では1H2H、窒素では14N15N、酸素では16O, 17O, 18O、などです。各元素において、天然存在比の最も多い同位体を主同位体と言います。前述の4元素については、12C, 1H, 14N, 16Oが主同位体です。分子の質量と分子量の違いを理解する為には、原子の質量と原子量の違いを明確にしなければなりません。原子の質量とは、炭素・水素などの各原子について、同位体毎の質量の事です。12C原子の質量は12.000…13Cの質量は13.00336です。そして炭素の原子量は、各同位体の質量に天然存在比(12C:約98.93%13C:約1.07%)を加味した平均値ですから、12.0107となります。有機化合物を構成する代表的な元素について、同位体の質量と天然存在比の表は以下のようになります。

同位体質量表

 

分子の質量は分子を構成する各元素について同位体毎の質量の和であり、分子量は同位体存在比を加味した原子量の和です。アミノ酸の1種であるアルギニンを例にとって説明します。アルギニン分子の元素組成はC6H14N4O2ですから、各原子について主同位体で構成される分子の質量は174.111679であり、整数で表すと174となります。また分子量は174.201であり、整数で表すと174となります。主同位体で構成される分子の質量を精密質量で表したものをモノアイソトピック質量と言い、整数で表したものをノミナル質量と言います。低分子化合物には、モノアイソトピック質量と分子量の値が近く、整数で表すと同一になるものが多く、分子の質量と分子量を混同してしまう原因になっていると思います。C, H, N, Oは何れも主同位体が天然存在比の大部分を占める(最も少ない12Cでも98.93%)ため、この様になります。尚、アルギニン分子の構成元素C, H, N, Oの中で、どれか1つの原子が主同位体よりも質量数が1大きな同位体に置き換わった分子(例えば6個の炭素原子の1つが13Cに置き換わった分子)の質量は、整数で表すと175となります。

 

一方、ハロゲン元素の様に、主同位体の天然存在比が比較的小さな元素を含む化合物では様子が変わってきます。例えばブロモアントラセン、元素組成はC14H9Brです。臭素の同位体は、上の表で分かる様に、主同位体は79Brで天然存在比は50.69%、第二同位体である81Brの天然存在比は49.31%であり、殆ど差がありません。モノアイソトピック質量は255.9888、ノミナル質量は256、分子量は257.1298であり、ノミナル質量と整数で表した分子量(257)との間に1の差が生まれてしまいます。ブロモアントラセンのLD-TOFMSlaser desorption time of flight mass spectrometer)によるマススペクトルを下図に示します。

ブロモアントラセン

 

これらは分子から電子が1つ脱離したイオン(M+)であり、電子の質量を無視すれば、m/z値は中性分子の質量と等しくなります。m/z 25679Brを含むブロモアントラセンのイオン、m/z 25881Brを含むブロモアントラセンのイオンです。観測されているイオンのm/z値から得られるのは、Brの同位体毎の分子の質量情報であって、分子量(257)では無い事が分かると思います。

 

イオンのm/z値から分子の質量を知るためには、イオン種が分からなくてはなりません。前述のブロモアントラセンの例ではM+だったので、電子の質量を無視すれば、m/z値は中性分子の質量と等しくなります。しかしLC/MSでは、様々な付加イオンが観測される場合が多く、付加イオンの種類を判断する方法は、このブログが参考になると思います。

MSのメーカーさんでアプリケーションを担当されている方でも、分子の質量と分子量の関係を明確に説明できる人は実は結構少ないようです。

  

尚、分子量と言う用語、最近では相対分子質量の方が推奨されています。

 

インハウスセミナーをご依頼頂くと、質量に関する事を含め、質量分析に関する正しい知識をお伝え致します。

お問合せはホームページからどうぞ

 

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2018年度横浜市立大学における質量分析の講義&実習、全て終了

今年度も4月から始まった横浜市立大学での質量分析講義&実習、週に1回出向いていまし
たが、7月の末で全て終了。先日レポートの採点も終えました。今年は、良く書けているレ
ポートとそうでない(ダメダメな)レポートとの差が大きかったような気が...
先ずはボリューム。感想以外では3~4つの課題を出すのですが、多い学生は各課題に対し
て1ページ以上、データも添付して10ページ程度のレポートがある一方、少ない学生は各
課題1行、全体で1ページに満たないというのがありました。殆どは「〇〇について考察せ
よ」と言う内容の記述式なのですが、それで1行って言うのは有り得ないと思うのですが
...
次は内容。色々書いてくれて、読んでいて面白いものもありますが、“これは理系の3年生
としてどうよ!?”と思った1例が、質量数に“約”を付けたレポートがあったこと!
「質量数約12の炭素」や「質量数約14の窒素」と言う具合です。質量分析に関する講義&
実習なので、質量に関する定義は特に重要視します。質量数は、原子中の陽子の数と中性
子の数の和ですから、必ず整数になります。“約”を付けたのは、“質量”と“質量数”を混同し
ていたのだと思いますが、有り得ないですよね...(>_<)
私はこの講義&実習だけを担当する非常勤講師として横市大に行っているので、レポート
に対するフォローが出来ないのが残念です。レポートに対する私の意見(評価)が聞きた
い人は、レポートにメールアドレスを書いておけばメールで伝える旨、毎回話すのですが
、まぁ多くて1年に1人ですね! 今回1人居たのでメールしたら、受信されずにエラーで
帰って来ちゃったし...
前のブログに書きましたが、この講義&実習は、6つのグループを3つに分けて行っていま
す。各グループの最初に講義を行うのですが、そこでアドラー心理学の話しを少しだけす
るようにしています。課題の分離と意識付けの話しを、ほんの少しだけですが...
質量分析と言うニッチな課題に対して学生達がどの様に取り組むか!
質量分析は非常に重要な学問なので、興味をもってくれるように内容を考えて講義で話し
ますが、それはそれとして、質量分析に興味をもって取り組むか、「このオジサン何云っ
てんだか!」などと思って右から左に聞き流すか、それは私にはコントロール出来ない事
です。
学生自らの意思で、色々な事に興味をもって取り組んで欲しいと思っての事ですが、中々
伝わらないみたいです。学生達が意欲的に取り組む様に、毎年少しずつ工夫していますが、

来年もまた考えよう。

 

大学や企業での質量分析講義のご依頼、いつでも受け付けています。

 

 

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2018年度横浜市立大学における質量分析講義&実習、第2クール終了

4月から始まった横浜市立大学の3年生を対象とした質量分析に関する講義&実習、第2クールが終了しました。

ここまでで、とても残念な学生が1人います。

 

実習はESI-MSとMALDI-MSを両方行い、それぞれにレポートを提出します。私はMALDI-MSを担当しています。

 

その学生は、ESI-MSの実習は受けたものの、MALDI-MSの実習は欠席でした。解析の時には出席していて、実習を体調不良で欠席したと伝えてきました。

そして、”実習を欠席してしまったけどどうなりますか?”と質問してきました。

 

私は非常勤講師なのでその辺りの扱いは分かりません。なので、そのように伝えると共に、”過ぎてしまった事をあれこれ心配するより、今出来る事をしよう!”

と伝えました。欠席してしまった過去は変えられないけど、解析の説明をしっかり聴いていればレポートは書けるはず。その学生が出来る事は、レポートを書いて提出する事でした。

しかし残念ながら、その学生はレポートを提出しませんでした...

 

この講義&実習の単位習得のためには、レポート提出はmustの筈です。

良い方向に変えられるチャンスを、自ら放棄してしまった訳です。重ね重ね残念です...

 

 

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MSのチューニング画面でのイオンプロファイルの確認

質量分析計をお使いの皆さんは、日々装置を使う前、チューニングの画面でバックグランドイオンや標準物質のイオンなどのイオンプロファイルを確認していますか?

最近の装置は、チューニングによる感度調整や質量校正を自動で行ってくれる機能が多くの機種において標準で装備されているため、分析者が自分自身の目で何らかのイオンのプロファイルを確認する事が(以前に比べて)少なくなっている様に思います。

 

オートチューニングによる感度調整は、通常メーカー推奨の標準物質由来のイオンをモニターし、その強度が最大になるようにイオン源やイオン輸送部、質量分離部の各種パラメーターを設定します。質量校正は、やはりメーカー推奨の標準物質由来の複数のイオンをモニターし、そのm/z値を理論値に対して補正します。

 

何れの場合においても、コンピューターが見ているのは対象となるイオンだけですので、それ以外の、例えばバックグランドイオンなどは、自身で意識して確認する事をお勧めします。特にLC-MSでは、溶離液やLC本体、イオン源の状態などがバックグランドイオンに反映されます。日常的にバックグランドイオンを確認する習慣をもつ事で、何か異常なデータが得られた時の原因究明に役立つ事があります。

 

 

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