質量分析原理など

マススペクトル解析のご依頼:経験を積むってやっぱり大切!

今週、以前からの知り合いのラボを表敬訪問してきました。オンライン脱塩、ソルナックチューブの営業目的もありましたが。ラボの装置や設備を見学させて頂き、業務内容などをご説明頂く中で、思わぬお仕事のご依頼を頂きました。

 

未知化合物の定性分析の仕事がたまにあって、測定までは出来るけどマススペクトルを解析して未知化合物の構造推定を行うための時間や人員の確保ができないとのこと。そこで、測定済みのデータ(高分解能LC-MS/MSで測定したマススペクトルとMS/MSスペクトル)から、ターゲットとなる未知化合物の構造推定をして欲しいというご依頼でした。

 

かなり急いでいるとのことで、数日間の猶予をもらうことで、その場で契約成立! 今日は一日中、マススペクトルと睨めっこしていました。まぁ、合間に走りに行ったりはしましたが...

 

構造予測が全くできていないということで、かなり苦戦することが予想されましたが、MS/MSスペクトル中にヒントが隠されていて、それに気づいたことから、自分としてはある程度の構造予測ができました。そして、それを元にしてデータベース検索したところ、それらしい構造がヒットしてきました。MS/MSスペクトルを帰属してみましたが、矛盾は有りません。

 

複数化合物の構造推定をするので、今夜もう少しと日曜日に少し、あとは月曜日に頑張れば、何とか目途はつきそうです。

 

自分で測定していないデータを解析することは余りないので、どうなるかなぁとかなり心配しながら受けた仕事ですが、何とか良い結果を報告できそうです。今回は、MS/MSスペクトル中のヒントに気付いたのが大きいです。これは、長年色々なマススペクトルを見て、培った経験に基づく部分が大きいと思います。

 

質量分析を用いて未知化合物等の構造推定をお仕事でやられている方は、とにかく沢山のマススペクトルを見る事が重要です。それが自分の経験値、引き出しの数に繋がります。

 

 

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LC-ESI/MSにおける酸性移動相条件での負イオン検出について

逆相分配クロマトグラフィーにおいて、カラムに保持され難い高極性化合物(イオン性化合物)を保持させるために、イオン対試薬を用いる方法と解離抑制の移動相を用いる方法があり、解離抑制のための移動相条件はLC/MSには適さないという話を以前ブログに書きました。

 

 

シリカベースの逆相カラムは、一般的には強塩基性条件に弱いので、解離抑制のための移動相条件としては酸性側で使う方が多いと思います。解離抑制のために移動相を酸性にするということは、分析種も酸性ですから、LC/MSでの検出には正イオンより負イオンの方が適しています。移動相が酸性、分析種も酸性、そして分析種を負イオンで検出するということは、分析種の負イオン検出におけるイオン強度は移動相の種類(酸性度)に大きく依存します。

 

先日、ソルナックチューブの実験のために日本電子㈱で装置をお借りした時、1つの化合物(分析種)を負イオンで検出する時、移動相を酢酸、ギ酸、TFAと変化させた時、分析種のイオン強度がどの程度変化するのか確認してみました。試料はアミノ酸の一種であるメチオニンを用いました。各移動相条件で測定した時の、メチオニンの[M-H]に相当する抽出イオンクロマトグラム(EIC)とマススペクトルを示します。

 

酢酸条件

メチオニン 負イオン 酢酸条件

 

ギ酸条件

メチオニン 負イオン ギ酸条件

 

TFA条件

メチオニン 負イオン TFA条件

 

各条件におけるEIC強度は、酢酸の時は5233、ギ酸の時は958、そしてTFAの時は未検出でした。移動相の酸性度が大きくなる程、メチオニンの[M-H]の生成が抑制されて、強度が減少していることが分かります。

 

また、TFA条件でHPLCとMSイオン源の間に陰イオン交換型のソルナックを接続した時のデータを示します。チューブ内での拡散の影響でピークはブロードニングしていますが、EICピークが確認できます。

 

TFA条件でソルナックチューブを用いた場合

メチオニン 負イオン TFA+ソルナック

 

また保持時間は、酢酸の時は1.8分、ギ酸の時は2.0分、TFA(+ソルナックチューブ)の時は3.6分でした。TFAでは、メチオニンのカルボキシ基の解離が抑制されたために保持が向上したことが分かります。

 

酸性移動相を用いて分析種を負イオンで検出する場合、移動相に添加した酸が付加したイオンが高い強度で検出される場合がありますが、今回のように酸が付加したイオンが検出されない場合、基本的には移動相の酸性度が高くなるほど、分析種の負イオンの生成は抑制される傾向にあります。

 

 

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LC/MS/MSにおけるData Dependent Acquisitionのパラメーター設定について

質量分析を用いた未知化合物の構造推定にMS/MSは欠かせません。MS/MSの測定法には幾つかの種類がありますが、最も多用されているのはプロダクトイオンスペクトルを取得する方法でしょう。以前はプロダクトイオンスキャンと呼ばれていましたが、最近は四重極飛行時間質量分析計(quadrupole time of flight mass spectrometer, Q-TOF-MS)のようにMS2で電圧をスキャンしないタイプのMS/MS装置が増えてきたので、プロダクトイオンスキャンという言葉は一般用語としてはあまり使われなくなってきました。三連四重極質量分析計(triple quadrupole mass spectrometer, QqQ-MS)のように、MS2で電圧をスキャンするタイプのMS/MS装置に限定した話としては使っても何ら問題はありませんが。

 

プロダクトイオンスペクトルは、特定のm/z 値をもつイオンが分解して生成した断片化イオンを測定して得られるものです。断片化する前のイオンをプリカーサーイオン、断片化したイオンをプロダクトイオンと呼びます。MS/MSでは、MS1で特定のm/z値をもつプリカーサーイオンを選択し、それをCID等により断片化し、プロダクトイオンをMS2で測定してプロダクトイオンスペクトルが得られます。

ここで、MS1でプリカーサーイオンを選択する方法は、大きく分けて2つあります。1つは自分でm/z値を設定する方法、2つ目はソフトで自動的に選択させる方法です。2つ目の方法をData Dependent Acquisition (DDA) と呼びます。メーカーによっては、Information Dependent Acquisition (IDA) と呼んでいる場合もあります。

自分でプリカーサーイオンのm/z値を設定する場合、当然ですが、設定する時には目的のプリカーサーイオンのm/z値が分かっている必要があります。つまり、試料をマススペクトル取得モードで予め測定しておく必要があります。しかし、貴重な試料の場合、何度も測定することは困難ですし、時間の節約という意味でも、一度の測定でマススペクトルとプロダクトイオンスペクトルの両方を取得したいという要求があり、それに応えたのがDDAです。DDAは、最近のMS/MS可能な装置には殆ど搭載されている機能です。

 

ここでは、前回のブログに書いた通り、DDAでのパラメーター設定について基本的な考え方を解説します。

 

先ず、自動的にプリカーサーイオンを選択する時のトリガーになるのは、イオンの強度(閾値)です。図1DDAの概念図を示します。基本的な考え方としては、溶離液だけがイオン源に導入されている時に得られるマススペクトル上に観測されるイオン強度よりも少し高い値を閾値として設定します。図1では1000が設定されています。すると、カラムから何も試料成分が溶出していない時はマススペクトルを取得し続け、カラムから試料成分が溶出してイオン源に導入され、それがイオン化されて閾値より高いイオン強度を示した時、そのイオンをプリカーサーイオンとして選択してCID等により開裂させ、プロダクトイオンスペクトルが取得されます。

 DDA-1

1 DDAの基本概念図

 

次に重要になるのが、1つのイオンを何回プリカーサーイオンとして選択させるかということです。これは、Dynamic Exclusionという機能の1つになります。そして、この機能は、高分解能質量分析計か低分解能質量分析計かによって設定するパラメーターが変わります。ここでは、高分解能質量分析計の場合で説明します。例えば、図2に示すように、測定開始後1分に、モノアイソトピック質量300.0000という化合物(成分①)がカラムから溶出し、そのプロトン付加分子としてm/z 301.0073というイオンが閾値を超えて、プロダクトイオンスペクトルが取得されました。このイオン強度が閾値を超えたのは、ピークの立ち上がり部分なので、この後も暫くの間m/z 301.0073イオンは観測され続けます。ここでDynamic Exclusionの設定をしていないと、m/z 301.0073イオンが高い強度を保っている間、ずっとこのイオンのプロダクトイオンスペクトルが取得され続けることになります。図2のように、成分①の直ぐ後ろに成分②(m/z 371.1234)が溶出したとして、その強度が成分①のイオンより小さければ、m/z 371.1234はプリカーサーイオンとして選択されないことになってしまいます。

これを回避する方法の1つがDynamic Exclusionで、一度プリカーサーイオンとして選択されたイオンを一定時間候補から外す(Excludeする)という機能です。他の方法としては、1度に選択させるプリカーサーイオンを複数設定することです。上記の例であれば、Dynamic Exclusionの設定をしていなくても、1度に選択させるプリカーサーイオンを、強度の高い順に2つと設定しておけば、成分①,②両方のイオンのプロダクトイオンスペクトルが取得されます。

DDA-2 

2 Dynamic Exclusionの設定

 

1度に選択させるプリカーサーイオンの数は、クロマトグラムのピーク幅と装置のスペクトル取得速度に関係してきます。1つのマススペクトルに対して、閾値を超えたイオンの中からプリカーサーイオンが選択されますので、選択させるプリカーサーイオン数を例えば10と設定すれば、マススペクトルを取得した後、(閾値を超えた)強度の高い順に10個のプリカーサーイオンのプロダクトイオンスペクトルを取得し、その後新しいマススペクトルを取得することになります。スペクトル取得速度の遅い装置でこのような設定をしてしまうと、10個のプロダクトイオンを取得している間に次の成分がカラムを溶出してイオン源に導入されてしまうというような問題が起こってしまいます。

 

また、同じプリカーサーイオンを何回続けて選択するかという設定もあります。これを余り多く設定するのは意味がないと思います。

 

Exclusionの設定は、Dynamic Exclusion以外にも、予めプリカーサーイオン選択の候補から外すm/z値をリストとして登録しておく機能があります。これは、溶離液への添加剤や、溶離液や容器へのコンタミの影響等によって高強度のバックグラウンドイオンが常に観測されている状況で使用します。高強度のバックグラウンドイオンが常に観測されている場合、プリカーサーイオンを自動選択させるための閾値は、そのバックグラウンドイオンの強度より低く設定する必要があり、そうすると、そのバックグラウンドイオンが優先的にプリカーサーイオンとして選択されてしまいます。Exclusionリストに予め登録しておくことで、不要なプリカーサーイオンが選択されてしまうリスクが軽減されます。

 

Dynamic Exclusionで一度プリカーサーイオンとして選択されたイオンを一定時間候補から外す機能については、その時間設定が重要です。理由は2つ。1つ目の理由は、異性体が存在する可能性です。異性体は、基本的には全く同じm/z 値のイオンが生成するので、候補から外す時間を長くし過ぎると、その間に異性体が溶出し、そのイオンがプリカーサーイオンとして選択されなくなってしまいます。天然物や代謝物には異性体が多いので、この設定は重要です。2つ目の理由は、閾値との関係なのですが、閾値を低めに設定しておくと、クロマトグラムの立ち上がりの強度がまだ低いところでプロダクトイオンスペクトルが取得されます。プリカーサーイオン強度が十分でないため、S/Nの低いプロダクトイオンスペクトルが得られてしまう可能性が高いです。できれば、ピークトップの付近でプリカーサーイオンが選択されるのが理想的です。このような場合には、クロマトグラムピーク内で複数回同じプリカーサーイオンが選択されるように、候補から外す時間を短く設定することが有効です。ソフトによっては、ピークトップ付近でプロダクトイオンスペクトルが取得されるようなパラメーターが供えられたものもあります。

 

高分解能質量分析計を用いる場合、小さなm/z値の差を識別することが出来ますので、Dynamic Exclusionの設定において、一度選択されたプリカーサーイオンと近いm/z 値のイオンが観測された時、それらを同一のm/z値と見なすか否かという設定も必要です。そのためのWindow幅も通常Dynamic Exclusionのパラメーターにあります。この設定は、QqQ-MSIT-MSにはありません。

 

さらに、低分子化合物のプロトン付加分子や脱プロトン分子等においては、通常モノアイソトープピークの強度が最も高く、次いで13C1つ入ったピーク、13Cが2つ入ったピークという強度順にイオンが観測されます。殆どの場合、モノアイソトープピークのプロダクトイオンが取得されれば十分であり、13Cが入った同位体ピークのプロダクトイオンスペクトルは必要ありません。しかし、例えば成分A由来のイオンの同位体ピークがプリカ―サーイオンとして選択されてExcludeリストに入った後、成分Bがすぐ後ろに溶出し、そのイオンの強度が成分Aの同位体ピークより小さい場合、成分Aの同位体イオンのプロダクトイオンスペクトルが取得されてしまいます。このような状況は、低分子化合物の中でも比較的分子量が大きい(炭素数の多い)化合物が成分Aである場合に起こり易いと言えます。また、この問題を回避するため、同位体ピークは無条件で除外するという設定が可能なソフトがあります。

 

DDAで試料中の含有成分を如何に洩れなく拾ってプロダクトイオンスペクトルを取得するかは、Dynamic Exclusionの設定によるところが大きいと言えますが、どんなに上手く設定しても、必ず全ての成分由来のイオンをプリカーサーイオンとして選択させプロダクトイオンスペクトルを得られる訳ではありません。DDAは有用な機能であり、私自身仕事で頻繁に使いますが、DDAにも弱点があり、それに対応するための他の機能があるので、別の機会に紹介して考えてみようと思います。

 

LC/MSに関するコンサルティングや技術指導のご依頼は複数頂いておりますが、中でも高分解能LC/MS/MSを用いた未知化合物の構造推定に関する技術指導は最もご好評頂いております。ご依頼等は、ホームページの問い合わせからお願いします。

 

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LC/MS技術指導:マススペクトルの解釈とData Dependent Acquisitionの設定

年末に、初めてのお客様からのご依頼により、LC/MSの技術指導を行ってきました。都内のある企業の分析室です。

 

装置は、低分解能でMS/MSが可能な機種。ここ1年程の間に導入され、担当者がメーカーエンジニアによるトレーニングを受けて使用されており、実際の試料やそれに含まれているであろう標品などを測定していました。定性分析・定量分析どちらにも使っていますが、主には定性分析に使っているとのこと

 

LC/MSで定性分析を行うためには、先ずはマススペクトルの解釈が出来ないと始まりません。実際、担当者の方もそれがよく分からずに苦労されていたようでした。メーカーのトレーニングではそこまでは教えてくれないようですね。イオン源は専らESIを使っていて、ESIで得られるマススペクトルの解釈には、何といっても生成し易い付加イオンを頭に入れておくことが重要です。この記事にその辺りのことが書いてあります。

 

また、MS/MSにより得られるプロダクトイオンスペクトルの解析も重要ですが、残念ながら低分解能装置では得られる情報は極限られてきます。全くの未知化合物の場合、殆ど手が出ないですね。このお客様の場合、試料中の未知成分でも標品との部分構造の変化程度とこことで、低分解能のMS/MSでも解析可能である場合が多いようでした。標品のMS/MS測定は結構進んでいるようでしたので、それをデータベース化するように提案しておきました。

 

MS/MS測定にはData Dependent Acquisition (DDA)を用いていましたが、そのパラメーター設定がデフォルトのままでした。DDAのパラメーター設定は、デフォルトでもそこそこデータは得られますが、残念ながら十分とは言えません。機種に依存するのですが、このお客様の場合にも、デフォルト設定ではかなり取りこぼしがありました。今回の技術指導では、結果としてDDAの最適化にかなりの時間を割きました。DDAのパラメーター設定の重要なポイントについて、以前ブログで書いたような気がしたのですが、確認した限り書いていなかったようなので、次の機会に書いてみようと思います。重要なポイントは幾つかありますが、主なものは“プリカーサーイオンを選択する時の閾値”、“繰り返し回数”、“プリカーサーイオンを選択する時のm/z幅”、Dynamic Exclusionの設定“などでしょう。

 

丸一日かけてみっちり指導したので、この担当者はかなりレベルが上がったと思います。試料前処理についても全く問題がなかった訳ではありませんでしたが、現状の分析目的においては大きな問題になることはないと思ったので、そのことを伝えるにとどめました。

 

このお客様のように、エンジニアによるトレーニングだけ受けて、デフォルト設定でそこそこ使えるに留まっているエンドユーザーは相当数いると思われます。折角高価な装置を使っているのだから、もっと装置自体や分析法について深く習得して、より良い分析ができる人が増えると良いと思うし、その手伝いをもっと出来るように“質量分析屋”としての知名度を上げていく必要があると思います。

 

 

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LC/MSにおける試料調製や前処理で重要なポイント

LC/MSにおける試料調製や前処理として何をするか?は、試料の内容によって異なります。“溶解”、“ろ過”、“遠心分離”、“固相抽出”、“溶媒抽出”、“除タンパク”、などなど。LC/MSに供される試料は液体ですから、何等かの溶媒は必ずと言っていい程頻繁に使います。そして、溶媒を扱う時のピペッターや容器。これらは、前処理の内容に関係なく必須であると考えてよいでしょう。そしてLC/MSにおける試料調製や前処理で重要なポイントの1つは、操作に用いるこれら溶媒や容器類を使ったブランク試料を準備することです。

 

例えば、“固体試料を遠沈管に計りとり、超純水をピペッターで加えて溶解し遠心分離、上清をピペッターを使って吸い取り、オートサンプラーバイアルに移してキャップをする”という試料調製をするとします。ここで使うのは、遠沈管、超純水、ピペッター、オートサンプラーバイアル、キャップです。試料を使わずにこの操作を行い、ブランク試料を調製します。ここで、ブランク試料は、分析試料と同時に調製する必要があります。

 

先ず、ブランク試料の必要性についてですが、試料以外の夾雑成分を試料成分と区別することに他なりません。上記の方法で、ある試料を調製し、LC/MS分析したら以下のTICクロマトグラムが得られたとします。

分析試料TICC

分析試料のTICクロマトグラム

 

 

そして、ブランク試料を測定して得られたTICクロマトグラムが以下だとします。

ブランク試料TICC

ブランク試料のTICクロマトグラム

 

ブランク試料のTICクロマトグラムで観測されている星印の2ピークは、分析試料のTICクロマトグラムにも観測されており、これらはブランク試料由来の夾雑成分である可能性があり、即ち試料由来の成分ではないということになります。ここで、もしブランク試料を測定しなければ、夾雑成分含めて全て試料由来の成分であると誤解してしまうかも知れず、誤った分析結果が得られてしまう可能性があります。

 

ここで早合点してはいけないのは、ブランク試料のTICクロマトグラムで観測されたピークは、必ずしもブランク試料由来ではない可能性があるということです。これについては、また別の機会に説明します。

 

また、ブランク試料を分析試料と同時に調製する必要性は、主として溶媒の純度に関係します。例えば、上記の操作で使用する超純水が超純水製造装置から採水したものだったとします。超純水製造装置から採水した超純水は、通常純度が非常に高く、採水した直後から大気中の成分が溶け込み始めます。多検体を調製するにはある程度の時間を要するので、ブランク試料と分析試料の調製に時間差があるのは仕方ないことですが、できるだけその時間差を短くする努力は必要です。違う日に調製したブランク試料を使うなどという行為が論外であることは、言うまでもありません。

 

LC/MS分析では、必ずブランク試料を測定しましょう。

 

 

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大学技術職員さん向けの研修会で質量分析の講義をした時のアンケート結果を見て

8月の末に、全国の大学の技術職員さん達の研修会が長岡で行われ、その前日に質量分析の講義を行い、その時のことを以前ブログに書きました

技術職員研修会チラシ

 

最近になって、その時の参加者に対して行ったアンケート結果が、主催者から送られてきました。概ね好評だったので、先ずは一安心しました。

 

プラス意見の1つに、“MSメーカーの人ではなかったこと”が挙げられていました。この種の講義には、メーカーのアプリケーション担当者が呼ばれることが多いのですが、その場合どうしても自社装置の宣伝的な内容が入ってしまいます。話す本人はそのように意識して居なくても、聴講者からはそのような印象を持たれてしまいます。まぁ、仕方ないことではありますが。その点では、私はMSメーカーではなく、かといってユーザーという訳でもなく、大学でたまに講義なんかやったりして、でも企業の人間で、自分で質量分析も行っていて、面白い立場ですよね。それが良かったのかも知れません。

 

マイナス意見の1つには、“LC/MSの話しが中心だったのが残念”というのがありました。その方は普段、直接試料導入でのFABEIの測定をすることが多いのだと思います。私自身、日本電子に勤めていた時は、直接試料導入のEIFABGC/MSLC/MSMALDI/MS、ありとあらゆるタイプの質量分析を経験し、今では殆どがLC/MSですが、やはり難しいのはLC/MSに関連することだと思い、今回はある程度LC/MSにフォーカスした内容にしました。参加者は30名程居ましたから、その人達全てが満足する話を1時間程度で出来る訳はなく、多少マイナスな意見があるのは仕方ないかなぁと思います。

 

今回は初めての場で、手探りで講義内容を考えたので、次回もし呼ばれれば、少し違う視点から話を組み立てても良いかなぁと思いました。

 

この種の講義には、交通費(必要であれば宿泊費)だけ出して頂ければ無報酬で講師依頼を受けています。お気軽にご相談下さい。

 

 

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