2017年2月

質量分析インフォマティックス研究会第二回ワークショップに参加して

2/24の午後、表題の「質量分析インフォマティクス研究会第二回ワークショップ」に参加してきました。

プログラムなどは、こちらをご参照下さい。

 

インフォマティクスなどという言葉(研究分野)は、私が質量分析を始めた頃には無縁でした。

その頃の質量分析については、こちらで少し書いています。

 

何しろマススペクトルデータがアナログですから、一人が一台の質量分析計で測定できる検体数は、どんなに頑張っても10検体くらい。

しかも試料導入法は直接導入しかありませんでしたから、単離精製した化合物を測定していて、1検体1化合物でした。

(例えば天然物試料をLC/MSで測定すれば、1検体100以上の化合物です)

 

質量分解能は低く同位体ピークが分離できる程度、MS/MSはありませんでした。

イオン化法は電子イオン化(electron ionization, EI)のみ。

マススペクトルから得られる情報は少なく、当時はまだパソコンも普及していませんでしたし、方眼紙に定規と鉛筆でマススペクトルを書いて、

フラグメンテーションの解析も電卓片手に手書きでした。それで何とかなっていました。

 

しかし、今はパソコンの性能が上がってデータ測定のスピードがあがり、1検体100以上の化合物から成る試料を1日に数百検体も測定できてしまいます。

質量分析計の性能も向上し、特に分解能についてはTOF-MSで30,000以上、FTを使う装置では100,000以上が容易に達成できます。

MS/MSが可能な装置も増えています。マススペクトルから得られる情報量が桁違いに多くなっていて、とても人の手と目、頭だけでは処理できなくなっているのが現状でしょう。

 

私自身、お客様からの依頼で天然物のLC/MS/MS測定&マススペクトル解析をすることがありますが、マススペクトル解析支援ツールやデータベースを活用しています。

 

そんな訳で、今回は知り合いから教えて貰ったこのワークショップに参加してみました。

演者の中に二人知り合いがいたというのも、参加の決めてにはなりました。

 

未知化合物の構造推定を質量分析を用いて行う場合、高分解能のMS/MSが必要なのは言うまでもありません。

そのデータから以下に構造を推定していくか...

完全に未知化合物の場合には、よほど運が良くないと、何等かのデータベースやツールを使わざるを得ないと思います。

前に解析した化合物とマススペクトルが似ているとか...

 

イオンの精密質量情報から、元の分子の元素組成を一義的に決められるという前提の基に、今は以下のアプローチがあると思います。

  1. 1. MS/MSにより得られるマススペクトル(プロダクトイオンスペクトル)のデータベースで検索する

2. 推測した化合物の構造からフラグメンテーションを予測し、実測のプロダクトイオンスペクトルと比較する

3. 有機化合物データベースに登録されている化合物の構造からコンピューターでフラグメンテーションを予測し、実測のプロダクトイオンスペクトルと比較する

 

1については、一般的に使えるデータベースへの登録化合物数が非常に少ないので、よほど運が良くないとマッチすることは無いでしょう。日々データ数は増えているので、将来的には期待できます。

2については、そもそも未知化合物のマススペクトルと精密質量情報から、”この化合物はこんな構造だ”などと推測することは先ず不可能なので、医薬品の代謝物や、天然物であれば既知成分の類縁体など、かなり限られると思います。

3については、私自身も最も期待していますし、これから益々需要が伸びてくる方法だと思います。今は、MetFragというWebツールを主に使っています。今回のワークショップでは、理研の津川氏がその方法で解析ツールを開発していて、今回もそのお話しをされていました。私は、津川氏のお話しは今までに4~5回は聞いていて、直接お話ししたことも何度かあります。もともとは質量分析の専門家ではないとのことですが、有機イオンのフラグメンテーションについてとても良く勉強されていて、彼の開発しているツール(MS-FINDER)は最近使い始めました。MetFragの方が、私にとっては手軽に使えるのですが、今後はMS-FINDERを使い込んでいこうと思っています。MS/MSにおけるフラグメンテーションは、切れやすいところから切れる(結合エネルギーの小さな結合ほど開裂し易い)という基本原則はありますが、単純に開裂するだけでなく、転位反応や再配列などを伴う開裂もあるし、イオン-ニュートラルコンプレックスを経由して起こる開裂もある。置換基効果や同位体効果までも考慮すると、構造からフラグメンテーションを予測するというのは、実際には非常に難しいことだと思います。実際、上記2では、経験則に基づいて構造からフラグメンテーションを予測してくれて、私も使ったことがありますが、実測のイオンと合わない予測フラグメントイオンが沢山出てきて、余り役に立たない印象です。3でも、構造からフラグメンテーションを予測することは同じですが、その予測にどのようなフラグメンテーション上の情報を加えていくかが重要なのだと思います。津川氏は、そのような情報(例えばマスシフト則とか)を加えて実装を工夫されているようです。

 

ワークショップでは、その他には、沖縄科学技術大学院大学の早川氏の話は面白かったですね。やはり、プロダクトイオンスペクトルから低分子化合物の構造を推定するためのツールを開発していますが、アプローチがとても興味深かったです。”似た構造の化合物はプロダクトイオンスペクトルも似ている筈”という考えの基で、ある試料のLC/MS/MS測定から得られた複数のプロダクトイオンスペクトルの類似性からクラスタリングを行い、精密質量から得られた元素組成からデータベース検索を行い、クラスタリングしたグループでデータベース検索結果の中に共通の部分構造を有するものがあれば、それがそのクラスタリンググループの共有構造に近い筈、という考えに基づいて未知化合物の構造推定を行うという方法のようです(全ては理解できませんでした)。

 

私も質量分析屋ですから、日本の研究者の方が開発しているツールは使い込んで行って、質量分析屋として開発に協力できることがあれば協力したいと思います。

 

 

現場でのLC/MS分析サポートや技術指導、マススペクトル解析サポート、インハウスセミナーのご依頼は、ホームページのお問合せからどうぞ!

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
エムエス・ソリューションズ株式会社
http://www.ms-solutions.jp/
住所:〒187-0035 東京都小平市小川西町2-18-13
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

新規LC-MSイオン源の開発

今日は、今開発中の新しいLC-MSイオン源の実験をしていました。なかなか面白いデータが取れました。

5月の質量分析総合討論会で発表します。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
エムエス・ソリューションズ株式会社
http://www.ms-solutions.jp/
住所:〒187-0035 東京都小平市小川西町2-18-13DSC_2371
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

上手なLC/MSには時として装置の工夫が必要

LC/MSに関する共同研究と技術指導のために月1回程の頻度で訪問している企業様では、装置の改造や工夫を色々としています。

 

先ずはHPLC。試料の性質上APCI(大気圧化学イオン化)を使っていますが、通常の条件と異なり、移動相はミクロ流量が良いことが分かりました。この最適条件を見つけるのに、結構苦労しました。

 

APCIでは、移動相溶媒が反応ガスの役割を果たします。水やメタノールなどの移動相溶媒がコロナ放電のエネルギーでイオン化し、溶媒イオン(正イオン検出でメタノール移動相の場合主としてCH3OH2+)と試料分子(M)が衝突してプロトン(H+)が移動し、MH+が生成します。移動相溶媒が試料分子のイオン化に関与するため、移動相溶媒が試料に対して過剰に存在している方が有利です。APCIで内径4.6 mmの所謂分析カラム(移動相流量1 mL/min)が主として用いられるのは、そのためです。

 

しかし、この企業様では、私が関わる前からAPCIを一般的な条件で使っていて、既知試料分子から生成するイオンの帰属が出来ないと言う問題を抱えていました。

私が共同研究で分析条件を検討するなかで、移動相流量が多い時、特にプロトン供与性が高い溶媒比率が多い時、そのような帰属出来ないイオンが観測されやすいことが分かりました。

 

色々と検討した結果、ミクロ流量にすることで、帰属可能なイオンが安定して生成されるようになりました。

 

しかし、使っているHPLCはミクロ流量対応ではないので、プレカラムスプリット方式のミクロLCを自作しました。前職での経験が大いに役立ちました。

 

先日、訪問して担当の方と一緒に実験をしている時、このLC-MSを販売した代理店の営業の方が来られて、

 

¨高橋さんに手伝って貰うようになって、この装置が上手く動き始めました。それまでは思うように結果が出なかったので。ありがとうございます。¨

 

と、客先での仕事に対して代理店の方からお礼言われちゃいました(^_^)v

 

売った装置で結果が出なければ、装置のせいでなくても、営業としても心苦しいでしょうからね。また、こう言うことを言ってくれる代理店の営業マンとは、ずっと付き合いたいと思います🎵

 

確かに、ここでの現在の結果は、私が手伝わなければ一生出なかったと思います。いまって装置が良いから、メーカーの人でも¨装置を工夫して何とかする¨って事はありませんから。

 

前職でLC/MSの応用研究の部署にいた時(入社して10年間位)は、装置が今みたいに良くなかったこともあり、自分で装置を色々といじったもんです。客先でもやりました。

 

メーカーにいれば自社の装置でしかこう言ったことは出来ませんが、今の仕事なら、お客様の同意のもとであれば、どこの装置でも出来るので、やっぱり現場で手を動かす仕事ってやっていて楽しいです。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
エムエス・ソリューションズ株式会社
http://www.ms-solutions.jp/
住所:〒187-0035 東京都小平市小川西町2-18-13
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

質量分析に関する一時的なお手伝いの仕事終了

 

昨年の夏過ぎ頃から、とある研究機関で質量分析関連の仕事を年明けまでの期間限定で頼まれていて、今日終了しました。

 

担当の職員さんが辞めてしまってチョッとだけ人手が欲しいとのことで、週一~2回/3週くらいのペースで訪問して、長く勤めている技術職員さんのサポートをしていました。

定量分析のデータ解析が主でした。

 

期間限定で、チョッとだけ人手が足りないっていうところで、私のところに依頼されたのだと思います。

 

派遣さんを頼めば基本的に毎日になってしまうし、しかも期間が短いから頼める会社がなかなかない。まして、仕事の内容が質量分析とくれば、素人さんに対して仕事を教えるだけでも結構な労力ですからね。

 

私は、初日の午前中2時間位説明を聞いただけで、午後からは一人でできました。まぁ、専門家ですから、当然ですが。

 

会社設立以来この種の仕事は初めてでしたが、質量分析に関して役に立つことなら基本的に何でもやるスタンスで今の仕事をしていますし、¨手伝ってくれて助かりました¨と言って頂き嬉しかったです🎵

 

 

インハウスセミナー、マススペクトル解析、LC/MS技術指導、LC/MS分析代行など、質量分析のことなら何でもご相談下さい。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
エムエス・ソリューションズ株式会社
http://www.ms-solutions.jp/
住所:〒187-0035 東京都小平市小川西町2-18-13
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

LC/MSインハウスセミナーへのこだわり

つい最近、以前から学会関係で親しくして頂いている方から、LC/MSのインハウスセミナーを頼みたいという連絡を頂きました。有難いことですし、頼りにして頂いていると思うと嬉しい限りです。

 

さて、私はで質量分析(主にはLC/MS)の話をさせて頂くことが多いですが、学会等外部主催のセミナーや講習会以外では、どこかに聴講者を集めてのセミナーは実施しておらず、インハウスセミナー(お客様のところに訪問して行うセミナー)のみで対応しています。

 

それは何故か...?

 

インハウスセミナーであれば、必要に応じて測定データを見せて頂きながら質問に答えたり、現場で起こっている問題についての相談に応じたりすることができるからです。

以前、“セミナーは所詮机上の空論”というタイトルのブログ記事を書いたことがありますが、セミナーを単に話を聴く場で終わらせてしまっては、現場での仕事で役に立ちません。

問題は現場で起こります。同じ装置であっても設置環境で異なるデータが得られるし、異なる問題が起こります。装置メーカーでは、装置がスペック通りに動いていれば問題ないというスタンスなので(これは当然のことですが)、使用上で起こる問題特LC/MSのバックグラウンドイオンの問題などは現場で解決するしかありません。

 

「測定データについての質問を受ける」

「現場で起こっている問題を装置の前で相談にのれる」

インハウスセミナーであればそれが出来るので、私はインハウスセミナーにこだわっています。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
エムエス・ソリューションズ株式会社
http://www.ms-solutions.jp/
住所:〒187-0035 東京都小平市小川西町2-18-13
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

車を運転中に珍しい体験をしました

一昨日、つくば方面にある企業様に、LC/MS技術指導のために訪問した帰り、外環道を和光インターで降りて国道を運転中、珍しい体験をしました。

ヒッチハイクの人を乗せました❗

4名の若そうな男子がいて、その中の一名が親指を立てていました。一瞬考えて、10 m程過ぎた所で停まりました。

彼らも、私の車が自分達のために停まったのか迷ったようで、様子を見ながら近づいてきました。

私は左後ろの窓を開けて、先頭の男子に

¨何処まで行きたいの?¨

と聞くと、

¨朝霞台駅までです¨
と言う返事。

危ない感じはなかったし、チョッと遠回りにはなるけど、乗せていってあげました。

ヒッチハイクの人を乗せるのは初めてでした。変な人なら危ないし、なかなか乗せる人いないですよね。国道で交通量多いのに、タクシーも捕まらず、困っていたって言ってました。

 

学生さんだったのかな?  聞きませんでしたが、4人とも礼儀正しくて、爽やかな若者でした。仕事の帰りだとか、どの辺りに住んでいるとから、他愛もない話をしているうちに駅に到着。短い時間でしたが、楽しかったです。

 

やはりリスクはあるので、¨やった方が良い¨などと勧めることはしませんが、今回に関しては何となくほんわかした気持ちになったし、珍しい体験ができたし、楽しかったし、体験しないと分からないことなので、あの時停まって良かったと思いますd=(^o^)=b

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
エムエス・ソリューションズ株式会社
http://www.ms-solutions.jp/
住所:〒187-0035 東京都小平市小川西町2-18-13
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

質量分析屋のブログでは小平市を拠点とする日々の活動やお役立ち情報をご紹介しております

東京都小平市にあるエムエス・ソリューションズ株式会社のブログでは、企業様や研究機関における技術指導やセミナーなど日々の活動のご紹介をはじめ、大学での講義の模様などもご案内しております。
当社がどのようなサービスをご提供しているか検討材料にしていただけるのはもちろん、質量分析の最新情報やノウハウなどもご紹介しておりますのでぜひご参考になさってください。
東京都小平市のエムエス・ソリューションズ株式会社のブログではトライアスロンやマラソンを趣味とする代表のエピソードなどもご紹介しております。技術指導やご相談を承る代表の人柄なども垣間見られるブログとなっておりますので、ぜひ判断材料の1つにお役立ていただき、初めての方もお気軽にお問い合わせください。