2017年7月

早稲田大学でのLC/MS技術指導:マススペクトル解析

先週、月1回の早稲田大学でのLC/MS技術指導に行ってきました。4月から研究室に配属された4年生、測定からデータ処理の流れはほぼ全員がこなせるようになりました。装置&メソッドの各種パラメーターについては、まだ理解できてない部分があるようです。しっかり理解させないと...

普段使っている装置は、SciexTripleTOF4600というQ-TOFMSです。

 

今回は、マススペクトル解析演習ということで、分子量200以下の低分子化合物のMS/MSスペクトルの解析をやらせてみました。これは私が測定したデータで、勿論化合物情報は伏せて。

 

先ずはノーヒント、使うのは電卓だけ。電卓だけでは、プリカ―サーイオンやプロダクトイオンの組成推定もままならないので、この段階では先ず手が出ませんが、それでも4年生4人で相談しながら考えていました。プリカ―サーイオンとプロダクトイオン、あるいはプロダクトイオン同士のm/z差から、その差が小さければ脱離している官能基の種類は推測できるので。また、スペクトルのヘッダー部分に保持時間が表示されていたので、親水性の高い化合物であることは気づいていました。

 

1時間程考えさせた後、第一ヒントということで、組成推定のソフトを使ってプリカ―サーイオンとプロダクトイオンの組成推定を行わせました。この段階でも、低分子化合物とは言えなかなか構造を組み立てるのは難しいのですが、m/z 60.055イオンの推定組成CH6N3からグアニジル基の存在に気付いた学生がいて、そこからものの10分程で大凡の構造を組み立ててしまいました。そして、グアニジル基・親水性化合物・分子質量から“アミノ酸ではないか?”と気づいた学生がいて、正解のアルギニンを導き出しました。流石は早稲田大学の学生達、優秀です!

 

因みに、指導補助についてきていたD2S君とM1I君にも同じ演習をやらせましたが、S君は10分程度、I君も30分程度で正解していました。

 

正直、この研究室の学生達、質量分析のレベルは相当高いです。特にD2S君については、そこらの質量分析計メーカーのアプリケーションケミストより遥かにレベルが高いと思います。

 

自分で指導していて何ですが、彼らのレベルの高さに驚かされた日でした。

 

 

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一人の会社で社員を一人増やすのって大変!

会社で人を増やすのって大変です。

 

そこそこの規模の会社であれば、一人や二人人を雇うのは大したことないのでしょうが、一人で始めた会社で一人増やすのは、それこそ生活をかけた一大決心です。

 

今年の1月から、役員待遇で一緒に仕事をする仲間を会社に迎えました。会計処理は妻にアルバイトで手伝ってもらっていますが、常勤で人を入れたのは設立7年目にして初めてです。

 

新たに製品開発を始めたので、その担当として。元々彼が、前の会社に勤めている時に少し手をつけていた技術だったので。

 

その製品は既に販売を開始していますが、実績としてはまだまだ彼の給料を払うには全然足りません。つまり現状は、今まで通りの私の(質量分析に関する技術指導やコンサルティング)収入で二人分の給料を払っている状況です。

 

Single income, Double output です。

 

元々十分な収入があった訳ではないので、今の状況はかなり厳しく、二人とも給料無しと言う月が何度かあります。先月終わった大きな仕事の報酬が今月末に入れば、7月分は二人とも払えるかな?  ただ、給料を払わなくても、健康保険と厚生年金は毎月引かれるので、厳しい状況は暫く続きそうです。

 

まぁ、事業って言うのは良い時があれば悪い時もありますから、今は踏ん張りどきですね!

 

しかし、来月から会社は新しい期に入りますが、今期中に払えなかった給料は、どうやって会計処理すれば良いのかな? 税理士に聞いてみよう。

 

 

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LC/MS用脱塩カートリッジにナトリウム付加イオンの生成を抑える効果がある?

Positive-ESIモードのLC/MSで、ナトリウム付加イオン([M+Na]+)が観測されて困る、プロトン付加分子([M+H]+)のみが観測されると良い、という話をよく聞きます。

 

私は未知試料を測定することが多いので、プロトン付加分子([M+H]+)、アンモニウム付加イオン([M+NH4]+)、[M+Na]+が適度なバランスで観測されると、分子質量を判断できるという観点から便利だと思うのですが...

 合成品の確認など、ある程度分析種の目途がたっている場合には[M+H]+のみが観測された方がマススペクトルがシンプルで解析し易いようです。

 

 

分析種が既知でLC/MSを行う場合、特に定量分析においては、同一分子から複数の付加イオンが観測されることは好ましくありません。

 

LC/MSにおける定量分析では、選択イオンモニタリング法(selected ion monitoring, SIM)や選択反応モニタリング法(selected reaction monitoring, SRM)が用いられます。SIMを用いる場合、同一分子から生成する付加イオンが複数になると、個々の付加イオン強度は低下しますので、イオン強度という観点から不利になります。また、SRMを用いる場合も、[M+Na]+[M+H]+よりも低エネルギーCIDにより開裂し難いために、プロダクトイオン強度を稼げないという点において不利になります。

 

[M+Na]+は有機溶媒側の移動相としてメタノールを用いる場合に生成し易いことが知られていますが、アセトニトリルを用いても観測されることはあります。“どのイオン種が生成し易いか”については、分析種の性質に大きく依存し、その他移動相溶媒の種類や環境に依存します。

 

先日、製薬企業の研究員の方から、弊社で開発したLC/MS用オンライン脱塩カートリッジ(ソルナックカートリッジ)を、[M+Na]+の低減に使えないか? というご相談を受けたので、試してみました。

 

ステロイド化合物を水/メタノール移動相を用いて測定し、ソルナックカートリッジの有無でマススペクトルを比較しました。

 

ソルナックカートリッジ無のマススペクトルを図1に示します。

ソルナック_脱Na_カートリッジなし

図1

 

メインピークは[M+H]+m/z 303)ですが、m/z 325[M+Na]+も観測されています。それぞれのm/z値でトレースした抽出イオンクロマトグラム(extracted ion chromatogram, EIC)のピーク強度比([303]/[325])は約10でした。

 

HPLC出口とMSとの間にソルナックカートリッジを接続した場合のマススペクトルを図2に示します。

ソルナック_脱Na_カートリッジあり

図2

 

マススペクトル上のm/z 325イオンは殆ど消失し、EICのピーク強度比([303]/[325])は約500となりました。

 

今回の条件では、元々(ソルナックカートリッジ無)の条件でのに[M+Na]+強度が低かったために、ソルナックカートリッジ使用によるマススペクトル上での顕著な違いは見られませんでしたが、ソルナックカートリッジに[M+Na]+生成を抑える効果がある(ナトリウムイオンがソルナックカートリッジに吸着された)ことが示差されました。

 

この効果については、引き続き検証を行う予定です。

 

ソルナックカートリッジおよびデモ測定8月末までのキャンペーン価格にて販売中です。

 

 

 

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横浜市立大学における講義&実習が終わりました

横浜市立大学3年生向けの質量分析の講義&実習、先週の月曜日で第3(最終)クールが終了しました(第1クール第2クールの記事はこちらから)。

 

あとは、月末に最終グループの学生達のレポートが届くので、その採点をして今年度は終了です。

 

毎年意識していることですが、今年度は特に、学生達が知らない事・分からない事に対して、¨分かりません¨と言って済ませてしまわず、¨考えてさせる、ヒントを与えてイメージさせる¨、ことを実践してきました。

 

講義・実習・解析の3回しか会わない中で、どこまで伝えられたか分かりませんが、やれる事はやったかなぁと思います。

 

質問を投げ掛けた時に¨分かりません¨と言って黙ってしまう学生が何人かいて、でもそれで済ませてスルーせずに、辛抱して待って、時にはヒントを与える等して¨何か答えさせる¨ことはなかなか根気のいることです。そして、そこまでやってあげると、殆どの学生は正解を答えます。

 

分からない学生は放っておいて先に進んだ方が楽ですが、それでは教育になりませんからね!

 

でも、¨分かりません¨と言ってしまう学生達も、本当に分からないケースって実はあまりなくて、¨自信がなくて発言できない¨ってケースが多いのです。

 

質量分析などと言う、彼等にとっては未知の学問について、ほぼ初めて学ぶ訳ですから、¨間違えてもイイ¨、¨考えて発言する¨ことを意識・実践させるようにしました。

 

でも、質量分析って大枠では化学ですから、時々は化学の基本的なことも質問します。それに対してトンチンカンな答えをしてしまう学生も中にはいて、¨理系の3年生としてその答えはどうよ!¨ ってしっかり勉強した方が良いよと伝えたこともありました。

 

基本的な知識をしっかりつけさせる。

さらに、自分で考えて実践する力をつけさせる。

 

非常勤ではありますが、大学で仕事をする者として、学生達にやってあげたいことですね。なんと言っても大学は、社会で役に立つ人材を卒業させてナンボだと思いますので。

 

最終日には、講義や実習をサポートしてくれたM1の女子学生(➕M1二名おまけ)と打ち上げ!

まりちゃん、3ヶ月間お疲れさま!!
秋には3年生が研究室に配属されます。私が出入りしているT山研に誰が入るか、毎年楽しみです(^-^)

 

今までT山研に入ってきた学生の中には、

「3年生の時の髙橋さんの講義が楽しくてT山研に入りました」

っていう子達もいて、そういう時にはホントに嬉しいですね!

 

 

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オンライン脱塩カートリッジを用いたLC/MS:ピーク形状から未分離成分の情報が得られた例

LC/MS用オンライン脱塩カートリッジ(ソルナックカートリッジ)を用いて、お客様から依頼された試料の分析(医薬品の不純物分析)を行った時のことです。日本薬局方で指定された分析条件(50 mMリン酸塩/メタノール、UV検出波長215 nm)を用いました。移動相流量は0.8 mL/minでした。ソルナックカートリッジのサイズは内径4.6 mm、長さ50 mm。リン酸塩濃度が高いために、図1のようにソルナックカートリッジを配置して、UVクロマトグラムの目的ピークの前1分間&後ろ3分間のみ導入しました。

ソルナックLC-MS_装置構成例

 

移動相流量とソルナックカートリッジのサイズより、UVクロマトグラムからどの位遅れてMSのシグナルが観測されるか判断できるため、その時間を目当てにMSで検出されているイオンを探索しました。

 

得られたマススペクトルに観測されたイオンから、強度が変化しているイオンについて抽出イオンクロマトグラム(EIC)を作成したところ、図2のようになりました。本物のデータは載せられないので、イメージ図です。

ソルナックLCMS_医薬品不純物_データ例

 

UVクロマトグラムのピークからEICピークが遅れて観測されているのは、ソルナックカートリッジの内部容量と、分析種とイオン交換樹脂との相互作用に依ります。また、EICのピーク幅はUVクロマトグラムより若干広がります。ここで注目すべきは、EIC-1EIC-2のピーク形状です。2つのイオンのm/z値により作成したEIC-1, 2のピーク形状は、明らかに異なっていました。UVクロマトグラムの目的ピークは単一成分に見えますが、実際には2成分が未分離状態で混在していて、それらはカートリッジの樹脂とそれぞれ異なる相互作用をしたため、このように異なるピーク形状のEICが観測されたと推測されます。

 

UVクロマトグラムで単一成分に見えてもLC/MSでは複数成分観測される」ケースは多々ありますが、脱塩カートリッジを用いることで、EICピーク形状からそのことが推測できた例でした。

 

会社設立7周年記念キャンペーン、ソルナックカートリッジおよびソルナックカートリッジを用いたLC/MS受託分析を割引価格で受付中です。

 

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分析装置のソフトは100%は信用しない方が良いですよ

先日、分析代行を依頼されているお客様のLC-MS装置を使って分析していた時のこと。

以前から分析している一連の試料なのですが、どうにも以前とは異なるクロマトグラムが得られてきました。

全く同じ試料ではないので、多少クロマトグラムのパターンが異なることは有り得ますが、全く異なることは無い筈でした。

 

原因が解るまでに丸一日費やしてしまったのですが、結果としては、HPLCの移動相条件として設定したグラジエントのタイムプログラムが動作していませんでした。

まだ納品されて1年程度の、かなり新しい装置でしたし、今まで沢山のHPLC(メーカー&機種)を使ってきましたが、このケースは初めてでした。

この装置でも、私が知っている限り、この現象が出たのは初めてでした。

 

下の図は、グラジエントのタイムプログラムの設定および測定中のモニター画面です。左が正常に動作している時の状態、右は今回不具合が起こった時の状態です。違いは分かるでしょうか?

グラジエントのタイムプログラム

 

グラフ中の緑色の塗りつぶし部分は、測定中に経過した時間を示しています。

時間経過に従ってB%が増加する設定なので、タイムプログラムが正常に動作している時は、経過時間の増加に伴って、グラフ中の緑色の塗りつぶし部分が右に動いていくと伴に、グラフ上のB%のバーが上がっていきます。

しかし、不具合が発生した時は、グラフ中の経過時間を示す塗りつぶし部分は右に動いていくので、一見すると動作しているようなのですが、グラフ上のB%は初期値のまま動いていませんでした。

 

この現象が分かった後、装置とPCを再起動して両者を再接続したらその後は正常に動作し、その後もこの不具合は発生していいません。PC画面の写真も撮影しましたが、写真を載せるとメーカーや機種が分かってしまうので、今回はイラストにしてみました。

 

私自身、前職では質量分析計の制御ソフトの開発に少し携わっていたことがあります。分析装置とその制御ソフトは、発売までの開発中に長い時間をかけてテストとデバッグが行われます。しかし、“これで100%問題ない”という状態までもって行くことは不可能です。現場で分析装置を使う人の中には、ソフトを100%信用してしまう人が少なからずいますが、それは危険です。ソフトの動作不良というのは、必ずしもバグではないケースが多いです。装置の使用状況に応じた不具合というものが発生することがあり、それは個々の状況に依って変わるので、メーカーによるテストでは再現しないこともあります。

 

測定は100%装置任せにせず、自分の目で確認できることは確認する。そうすることで、トラブルをいち早く発見することができ、結果として生産性の向上につながると思います。

 

*分析代行:装置はあるが使う人が居ない、あるいは装置のパフォーマンスを発揮できているか自信がない。そのようなお客様の現場に出向いて、私が分析を代行するサービスです。

 

 

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