2018年1月11日

LC/MS技術指導:マススペクトルの解釈とData Dependent Acquisitionの設定

年末に、初めてのお客様からのご依頼により、LC/MSの技術指導を行ってきました。都内のある企業の分析室です。

 

装置は、低分解能でMS/MSが可能な機種。ここ1年程の間に導入され、担当者がメーカーエンジニアによるトレーニングを受けて使用されており、実際の試料やそれに含まれているであろう標品などを測定していました。定性分析・定量分析どちらにも使っていますが、主には定性分析に使っているとのこと

 

LC/MSで定性分析を行うためには、先ずはマススペクトルの解釈が出来ないと始まりません。実際、担当者の方もそれがよく分からずに苦労されていたようでした。メーカーのトレーニングではそこまでは教えてくれないようですね。イオン源は専らESIを使っていて、ESIで得られるマススペクトルの解釈には、何といっても生成し易い付加イオンを頭に入れておくことが重要です。この記事にその辺りのことが書いてあります。

 

また、MS/MSにより得られるプロダクトイオンスペクトルの解析も重要ですが、残念ながら低分解能装置では得られる情報は極限られてきます。全くの未知化合物の場合、殆ど手が出ないですね。このお客様の場合、試料中の未知成分でも標品との部分構造の変化程度とこことで、低分解能のMS/MSでも解析可能である場合が多いようでした。標品のMS/MS測定は結構進んでいるようでしたので、それをデータベース化するように提案しておきました。

 

MS/MS測定にはData Dependent Acquisition (DDA)を用いていましたが、そのパラメーター設定がデフォルトのままでした。DDAのパラメーター設定は、デフォルトでもそこそこデータは得られますが、残念ながら十分とは言えません。機種に依存するのですが、このお客様の場合にも、デフォルト設定ではかなり取りこぼしがありました。今回の技術指導では、結果としてDDAの最適化にかなりの時間を割きました。DDAのパラメーター設定の重要なポイントについて、以前ブログで書いたような気がしたのですが、確認した限り書いていなかったようなので、次の機会に書いてみようと思います。重要なポイントは幾つかありますが、主なものは“プリカーサーイオンを選択する時の閾値”、“繰り返し回数”、“プリカーサーイオンを選択する時のm/z幅”、Dynamic Exclusionの設定“などでしょう。

 

丸一日かけてみっちり指導したので、この担当者はかなりレベルが上がったと思います。試料前処理についても全く問題がなかった訳ではありませんでしたが、現状の分析目的においては大きな問題になることはないと思ったので、そのことを伝えるにとどめました。

 

このお客様のように、エンジニアによるトレーニングだけ受けて、デフォルト設定でそこそこ使えるに留まっているエンドユーザーは相当数いると思われます。折角高価な装置を使っているのだから、もっと装置自体や分析法について深く習得して、より良い分析ができる人が増えると良いと思うし、その手伝いをもっと出来るように“質量分析屋”としての知名度を上げていく必要があると思います。

 

 

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