2020年9月11日

プロトン移動を伴うイオン化におけるイオン化抑制

大分前に、エレクトロスプレーイオン化(ESI)におけるイオン化抑制について書きました。

中でもネブライザーガスを使うタイプのESIでイオン化抑制が起こり易く、スケールダウンをすることでイオン化抑制が抑えられます。

 

ESIは、現存する質量分析のイオン化法の中で、恐らく最もイオン化抑制を受けやすいイオン化法ですが、それ以外にもイオン化抑制を受けるイオン化法はあります。

それは、タイトルにもる”プロトン移動を伴うイオン化”です。

 

プロトン移動を伴うイオン化は沢山知られています。代表的なのは、

CI, FAB, FD, MALDI, APCI, APPI, そして勿論ESI。

 

プロトン移動を伴うイオン化におけるイオン化抑制で支配的なのは、プロトン親和力(proton affinity, PA)の関係です。

 

上に挙げたイオン化法において、イオン生成領域で分析種(A)と夾雑成分(M)が共存し、それぞれの1分子が1つのプロトン(H+)を取り合ったとします。

つまり、こう言う↓状態です。

A-Proton-M

 

ここで、MがAよりPAが大きければ、プロトンはMに引っ張られるので、以下のようになります。

A-Proton-M-MH

 

プロトン移動によるイオン化プロセスは、CIやAPCIでは気相で起こるし、ESIやFABでは液相で起こります。

気相イオン化か液相イオン化かによって、同じプロトン移動によるイオン化でもイオン化抑制の程度は変わるかも知れませんが、ESIが他のイオン化に比べて特にイオン化抑制が起こり易いのは、このプロトン移動の他に以前のブログで解説した原因があるためです。

 

最近の質量分析で用いられるイオン化法は、EI以外の殆どはプロトン移動を伴いますので、プロトン移動によるイオン化プロセスを理解する事は、質量分析を考えるうえで非常に重要だと思います。ちなみに、ここで挙げたイオン化法では、正イオン検出においては、プロトン付加のほかにナトリウムイオン付加やアンモニウムイオン付加が起こる事がありますが、これらのイオン付加についても同様に考える事が出来ると思います。

 

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エムエス・ソリューションズ株式会社
代表取締役 髙橋 豊
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