2020年10月

LC/MSで観測されるスパイクノイズ

LC/MSで得られたデータを見ていると、たまにスパイクノイズが含まれている事に気づきます。

この例は、その典型的なもので、正直ここまで多数のスパイクノイズが観測されるのは極稀だと思います。

スパイクノイズは、クロマトグラムとマススペクトルの両方に観測されますが、今回のはクロマトグラムの例です。

実際のデータを示します。

スパイクノイズ_クロマト

図1 クロマトグラム

 

スパイクノイズ_スペクトル

図2 マススペクトル

 

図1はクロマトグラム、図2はマススペクトルです。

クロマトグラムは3段に分かれていて、上段はTICC、中段はm/z 3〇〇イオンの抽出イオンクロマトグラム(EIC)、下段はm/z 352.8イオンのEICです。マススペクトルは、上段がm/z 3〇〇のEICピークトップ、下段はm/z 352.85のEICピークトップ(保持時間約8分)で、それぞれスライスデータを作成したものです。m/z 3〇〇については、事情により正確な数値を示せないので、1の位と十の位を〇で示しています。約300と見て頂いて良いです。小数点以下の数値についても同様です。

 

注目すべきポイントは以下の3つ。

1 クロマトグラムのピーク幅(サンプリングポイント)

2 ピーク本数

3 m/zの小数点以下の数値(mass defect値)

 

先ず1について、中段と下段のクロマトグラムのピーク幅を比較すると、中段は下段よりもピーク幅が数倍広い事が分かります。ピーク幅が広いと言うと、クロマトグラフィーをやっている人は”ブロードニング”と認識しがちですが、この場合はそうではなく下段のクロマトグラムピークが細すぎる、つまりはピークではなくスパイクノイズであると言う事になります。この事は、サンプリングポイントを確認すると、より明確になります。

 

クロマトグラムの中段と下段について、保持時間8分付近の拡大た図3に示します。

スパイクノイズ_クロマト-2

図3 横軸拡大クロマトグラム

 

上下2つのピークを比較すると明らかですが、上のピークはサンプリングポイントが10点程度あるのに対して、下は1ポイントのみです。カラムでの分離が非常にシャープで、それに対してマススペクトル取得スピードが遅い場合には、このようなサンプリングポイントが1点のみと言うクロマトグラムピークが得られる事もありますが、この場合には2つのイオンで比較していますので、下のEICが正常でない事は一目瞭然です。

 

2つ目のポイントであるピーク本数については、図1下段に示す様に、異様にピーク本数が多い事です。異性体の存在によって、同一m/zのEIC上に複数のピークが検出される事はありますが、ここまで多いのは不自然で、試料成分由来のピークとは考え難くノイズと判断できるポイントです。

 

3つ目のポイントであるは、m/zの小数点以下の数値です。これは、mass defect値として置き換えて考えても良いと思います。mass defect値については、以前ブログに書いていますのでご参照下さい。図2のマススペクトルに示したm/z 3〇〇と352に着目すると、両者とも300程度のm/z値に対して、小数点以下の数値が片や0.17で片や0.85で全く異なっています。mass defect値に関するブログでも書いた通り、通常の元素組成をもつ有機化合物であれば、約300に対して小数点以下の数値が85になる事はなく、この事からも、このイオンは試料由来のイオンではなく、ノイズの類である事が推測できます。ただし、今回のケースに対しては、同位体ピークが確認できますので、完全なノイズと言うよりは、バックグランドで観測されているイオンが何らかの理由により強度が不安定で、スパイクノイズとして観測されていると考えられます。

 

シグナルが不安定になる要因としては、移動相流量に対して脱溶媒温度が低かったり、ネブライザーガス流量が最適でなかったり、あるいはニードル電圧が高過ぎたり、と言う事が有り得ます。

 

このようなスパイクノイズの類のデータは、本来は出現しては困るデータ、所謂False positiveなデータになりますので、生データを確認して排除できるようにするとデータ解析のスキルアップにつながると思います。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
エムエス・ソリューションズ株式会社
代表取締役 髙橋 豊
E-mail: tyutaka@ms-solutions.jp
http://www.ms-solutions.jp/
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

LC/MSやGC/MSで得られるクロマトグラムの種類

今回は、LC/MSGC/MSにおいて、マススペクトルを取得するモードで測定した時に得られるクロマトグラムの種類について説明します。添付した図は、上から(a)TICC, (b)BPIC, (c)高強度のバックを除いたm/z範囲で作成したクロマトグラム、(d)ある成分イオンのm/z値を設定した抽出イオンクロマトグラム、を示しています。試料は天然物の抽出液です。

Chromatograms_Rev

 

TICC:全イオン電流クロマトグラム(total ion current chromatogram

少し前まではTIC(全イオンクロマトグラム、total ion chromatogram)と呼んでいましたが、2013年質量分析関連用語についてのIUPAC勧告に基づき、日本質量分析学会は用語集を改定し、全イオン電流クロマトグラムと呼ぶようになりました。TICは、測定するマススペクトル上に観測される全イオン強度の和を、時間軸に対してプロットした二次元チャートと言う定義でした。しかし、この二次元チャートの縦軸は、イオンの強度を直接プロットしている訳ではなく、イオンが検出部によって変換された後の電流値をプロットしているため、ionchromatogramの間に電流(current)が入ったと言う経緯があります。マススペクトルを取得するm/z範囲の下限値を小さく設定し過ぎると、バックグランドイオン強度が増加するため、TICCS/Nが低くなり、TICC上でピークが確認し難くなります。

GC/MSの場合、強度の高いバックグランドイオンは、H2O由来のm/z 18N2由来のm/z 28O2由来の32などが主であるため、マススペクトルの取得m/z範囲を35からに設定すると、S/Nの良いTICCが得られます。m/z 50~の設定にすると、CO2由来のm/z 44イオンも含まれないため、更にS/Nは良くなります。

一方LC/MSでは、移動相溶媒分子や環境から混入する不純物などに由来するイオンがm/z 400位まで、環境に依ってはそれ以上大きなm/z領域までバックグランドイオンが観測されます。バックグランドイオン強度を下げたいからと言って、マススペクトル取得のm/z範囲を400~とかに設定する訳にはいかないので(それ以下の低分子化合物が検出されないので)、LC/MSで得られるTICCは、どうしてもバックグランドイオン強度の高く、S/Nが悪くなってしまいます。プロテオミクスなど一部のアプリケーションでは、マススペクトル取得のm/z範囲の下限値を比較的高く設定する事は可能です。

 

BPIC:ベースピークイオンクロマトグラム(base peak ion chromatogram

取得される全てのマススペクトルにおいて、ベースピーク(最大強度ピーク)の強度を時間軸に対してプロットしたクロマトグラムです。BPICは、試料成分から生成したイオンがベースラインに常に存在するバックグランドイオンよりも高強度で検出された場合、バックグランドレベルの低い、解析し易いクロマトグラムになります。一方、上に示した図(b)では、ピークは観測されず、むしろマイナスピークが幾つか観測されています。LC/MSで溶媒に含まれる夾雑物等の影響によってバックグランドイオンレベルが高い場合、このようなBPICが得られます。

この時の測定データでは、バックグランドとしてm/z 371イオンが常時高強度で観測されていました。図(c)は、このm/z 371イオンを含めないように、その少し上m/z 375以上の範囲を指定して作成したクロマトグラムです。高強度のバックグランドイオンが含まれないクロマトグラムであるため、TICCでは観測されていない小さなピークまで見つける事が出来ます。ただし、このクロマトグラムでは、m/z 371より小さなイオンは含まれませんので、そのような低m/zイオンを含んで且つベースライン強度の低いクロマトグラムを得るためには、強度の高いバックグランドイオンを除いて狭い範囲(例えばm/z 100200, 200300など)でクロマトグラムを作成するのも有効です。最近の装置には、自動でピークを抽出してくれるソフトが付属している場合もあるので、そのようなソフトの機能を使うのも良いですが、自力でピークを探す方法も知っておいて損はありません。ちなみに、このように比較的広いm/z範囲を指定して作成したクロマトグラムは、以前はRICreconstructed ion chromatogram、再構成クロマトグラム)と呼んでいましたが、先の用語改正によって推奨されない用語になりました。現在では、このようなクロマトグラムは、(d)と同じEICが使われます。

(d)は、保持時間44分辺りでスライスデータ(マススペクトル)を作成し、そこにメインピークとして観測されていたイオンのm/z値を設定して作成した抽出イオンクロマトグラム(extracted ion chromatogram, EIC)です。LC/MS(GC/MS)のデータ解析でマススペクトルを作成したら、そこに観測されているイオンのm/z値でEICを作成するようにしましょう。顕著なイオンが複数あれば、それらが共溶出している未分離成分由来なのか、同じ成分由来なのかを判断する目安になるし、そのEICで他の保持時間にもピークがあれば、異性体が検出されている可能性もあります。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
エムエス・ソリューションズ株式会社
代表取締役 髙橋 豊
E-mail: tyutaka@ms-solutions.jp
http://www.ms-solutions.jp/
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

少年サッカーチームのラントレーニング

もう7, 8年前から続けていますが、毎年3月中旬から11月中旬まで、週1回1時間程度、コーチをしている近隣の少年サッカーチームの子ども達にラントレーニングを行っています。基本的なランニングフォームを教える事と、サッカーで役立つ走力と持久力を付けさせるためです。最初の頃は6年生だけでやっていましたが、ランニングフォームを教えるのに6年生の半年チョットの期間では短いと思い、ここ数年は4年~6年までを対象にしています。

昨年までは3学年一緒にやっていましたが、今年は子ども数が多く、新型コロナの影響で外でのトレーニングとは言え密になる状況を避けたかったので、3学年隔週でやっています。

 

今年は初めてブログに書きますが、今週のラントレーニングは5年生、いつもトレーニングしている公園から700 m位いった所に、大きな道を渡るスロープ式の歩道橋があり、その上り坂を使ってインターバルトレーニングをやりました。私のGPSウォッチの記録ではこんな感じになります。

朝ラン サッカー5年 八坂ダッシュ 20201012

上り坂をダッシュ、下り坂をジョグ、その繰り返しを8往復計16本! 距離は50 mあるかないか位でしょうか。

前夜にサッカーの他のコーチ達と飲んでしまって、一寸二日酔いの状態でのインターバル、勿論私も一緒にやるので今週はかなりキツかったですね~ (-_-;

 

平日の朝、5時55分から始めるので、集合する時間帯に暗くなってきたら終わりです。今年は、あと3, 4回ってところでしょうか!?

 

こちらは毎年体力が衰えていきますが、出来るだけ長くこのトレーニングを続けられるように、セルフコントロールもちゃんとやりたいと思っています。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
エムエス・ソリューションズ株式会社
代表取締役 髙橋 豊
E-mail: tyutaka@ms-solutions.jp
http://www.ms-solutions.jp/
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

裸足で走るマラソン大会

今月18日に開催予定の、裸足で走るマラソン大会にエントリーしてしまいました!

ラン友さんに釣られてうっかりって感じでしたが、勿論初体験です。

 

と言う訳で、最近は近所の公園のトレイルコースを中心に、週に何度かは裸足で走っています。

119749446_3304434779638685_8004766419174810997_o 119864536_3304434679638695_8291243575235259794_o

 

原っぱや土の地面は気持ち良いのですが、小石がゴロゴロしていたり、粗い表面の舗装路は、足裏が痛くて泣きたくなります。

 

理論的には、足が地面に着いて脳が痛みを感じる前に足を上げて次の足を出せば、痛みを感じずに走る事が出来る筈ですが、現実的にはそんな芸当は出来ません。石がゴロゴロしている場所では、圧力を分散させるために足裏全体で接地して、出来るだけ体重をかけないようにソフトランディングにするように気を付けてはいるのですが、なかなか上手く走れません。

 

18日の大会では、トレイルコースを10 km走ります。制限時間は2時間、完走できるようにガンバろー!

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
エムエス・ソリューションズ株式会社
代表取締役 髙橋 豊
E-mail: tyutaka@ms-solutions.jp
http://www.ms-solutions.jp/
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

質量分析屋のブログでは小平市を拠点とする日々の活動やお役立ち情報をご紹介しております

東京都小平市にあるエムエス・ソリューションズ株式会社のブログでは、企業様や研究機関における技術指導やセミナーなど日々の活動のご紹介をはじめ、大学での講義の模様などもご案内しております。
当社がどのようなサービスをご提供しているか検討材料にしていただけるのはもちろん、質量分析の最新情報やノウハウなどもご紹介しておりますのでぜひご参考になさってください。
東京都小平市のエムエス・ソリューションズ株式会社のブログではトライアスロンやマラソンを趣味とする代表のエピソードなどもご紹介しております。技術指導やご相談を承る代表の人柄なども垣間見られるブログとなっておりますので、ぜひ判断材料の1つにお役立ていただき、初めての方もお気軽にお問い合わせください。