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LC/MSでリン酸塩緩衝液が基本的に使えないのは?

少し前、リン酸塩緩衝液がHPLC(高速液体クロマトグラフィー)の移動相として多用されていることについて解説しました。

リン酸塩緩衝液がHPLCの移動相として多用されるのは?

 

通常HPLCでは、紫外光や蛍光を用いる検出器が一般的で、これらの検出器に対してはリン酸塩緩衝液の使用は何の問題もありません。

 

しかし、HPLCの後ろにMS(質量分析計)を接続したLC-MS(イオン化はエレクトロスプレー(ESI))では、リン酸塩緩衝液は基本的に使えません。

 

その理由は以下の3つです。

 

① リン酸塩がESIで非常にイオン化されやすいから

LC-ESI/MSで何かの化合物(分析種)を測定する時、それよりイオン化されやすい化合物(夾雑成分)が共存すると、夾雑成分が優先的にイオン化されて、分析種がイオン化されにくくなるという問題が起こります。この現象をイオン化抑制と言い、リン酸塩はイオン化抑制を起こす化合物の代表例です。

 

② イオン源が汚染される

リン酸塩は、不揮発性の塩です。食塩のようなものです。⬇のリンクで簡単に解説していますが、

エレクトロスプレーイオン化について

 

リン酸塩は元々は固体(結晶)で、水や有機溶媒に溶解して移動相に用います。ESIにおいて、高電界の作用で生成した帯電液滴を加熱する過程で、大量のリン酸塩が結晶に戻ってしまい、イオン源が汚染される訳です。

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この写真で、コーンの先端部に塩が付着して、白くなっているのが判ると思います。この先端部には内径1 mm以下の小さな孔が開いていて、イオンを取り込むのですが、こうなると、イオンを取り込む効率が低下して感度が下がってしまいます。

 

③ コーンやキャピラリーが目詰まりを起こす。

 ESIでは、写真のコーンの他にも、キャピラリーと言う小さな孔(細孔)が開いている部品が使われます。写真のように、細孔に塩が付着して酷い状態になると、孔が完全にふさがれてしまいます。そうなると、イオンは全く観測されなくなってしまいます。

 

リン酸塩などの不揮発性塩の緩衝液がLC/MSに使えない理由が、お分かり頂けたと思います。

 

 

 

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LC/MSに関する講義:早稲田大学編

 

だいぶ前になりますが(8/26)、早稲田大学理工学部の天然物研究室へ、LC/MSの技術指導に行って来ました。

 

この研究室では、月に1~2回の頻度で、もう2年ほど仕事しています。忘年会や新年会にも呼んでもらうなど、楽しく仕事させて貰っています。

 

研究室にはLC-MSはなく、測定する時は東京女子医大近くにある施設に、借りに行きます。普段使う装置は、四重極質量分析計と飛行時間質量分析計を直列に繋いだタンデム質量分析計(通常QqTOF-MSと略します)が主です。たまに四重極を3つ直列に繋いだ三連四重極質量分析計(QqQ-MS)も使います。

 

両方ともMS/MSができる装置です。

MS/MSについては、

MS/MSとは?

 

実際に天然物から抽出した試料を一緒に測定しながら、条件設定や前処理、データ解析などのボイントを指導します。

 

先週は、ちょうど測定する試料がないというので、会議室で座学。

 

この4月から装置を使い初めた4年生が3人と経験の長いM2が1人。

 

最近知り合った島津ジーエルシーの三輪さんというLCカラムの営業の方に、午前中カラムのPRを兼ねて基礎講座をやって頂きました。

 

営業と言っても学生時代はカラムの研究をしていて、博士号ももっているので、内容は流石にしっかりしていました。

 

午後は私が担当。三輪さんも聴きたいと言うので、そのまま残ってもらいました。先ず4年生3人に、LC-QqTOF-MSのポンチ絵を書かせてみました。普段使っている装置のことをどれだけ理解しているか、試すためです。

 

相談しながらやらせましたが、

 

いやぁ~、書けないこと(>_<)

 

LCのカラムとインジェクターが逆になったり、TOFの後ろにQを配置してみたり…

 

なかなか面白い絵が見れましたf(^_^)

 

装置を単に研究のためのツールとして使うだけなら、装置の構成など知らなくても余り困らないのですが、

 

誰からも文句を言われない信頼性の高いデータを取得し、確実なデータ解析をするためには、装置構成を把握し、LC内での液体の流れや分析種の挙動、MS内での分析種イオンの挙動をイメージできることが重要であると考えています。

 

この研究室でMS班に入った学生達は、M2を修了する頃には、LC/MSに関しては、そこら辺の企業や研究機関でLC/MSを使っている研究者に負けないレベルにまで押し上げることが目標です。
M2の坂本くんは、基礎知識はまだまだですが、定性的なデータ解析のセンスについては高いレベルで、企業に入っても即戦力になると思います。

 

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LC/MSを用いた研究論文

LC/MSの分析をサポートさせて頂いている研究者の方が、連名で論文を書いてくれました。

日本電子に居た頃は自分でも論文を書いていましたが、今の仕事を始めてからはなかなか

書けませんので、有難いです。

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アドラー心理学によるカウンセリング・マインドの育て方

 

友人がブログで紹介していたアドラー心理学関連の本

 

アドラー心理学によるカウンセリング・マインドの育て方【書評】

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読んで見ました。

 

今までにアドラー心理学関連の本は4冊読みましたが、¨嫌われる勇気¨、¨幸せになる勇気¨に次いで参考になる本でした。

 

ある企業の中間管理職の人を主人公にして書かれていることもあり、会社組織における人間関係を円滑に保つためのヒントが書かれています。

 

私も、前の会社に勤めている時にアドラー心理学に出会っていたら、当時喧嘩ばかりしていた大嫌いだった上司に対して、違う関係性を築けたんじゃないかなぁって思います。

 

アドラー心理学では、

¨人の悩みは全て対人関係にある¨

としています。

 

会社(に限りませんが)では、中間管理職に最も難しい対人関係が求められると思います。特に部下に対する接し方。

 

日本企業の中間管理職の人達が、アドラーの考え方を理解して、少しでも仕事で実践できれば、良い会社が増えると思うけど、

 

残念ながら、該当する人達でこの本を理解できる人は、10%にも満たないんじゃないかなぁって思います。
色々な場面で少しでも人間関係に悩みをもっている人に、お勧めの一冊です。

 

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リン酸塩緩衝液は何故HPLCの移動相として多用されるのか?

一昨日のブログで、「リン酸塩緩衝液はHPLCの移動相として多用されているがLC/MSには使えない」と書きました。

リン酸塩緩衝液を用いたLC/MS受託分析第一号

 

今日は、リン酸塩緩衝液が何故HPLCの移動相として有益なのか、について解説します。

 

その理由として、以下のような事が挙げられます。

① 短波長領域(210 nm以下)に吸収をもたない。

② 酸性・中性・塩基性、3つのpH領域で緩衝能をもつため、移動相条件のpH検討が容易である。

 

リン酸塩緩衝液のデメリットとしては、

① 酸性で長期間使用するとカラムの劣化が早い。

② (今までは)LC/MSに使えない。

などが挙げられます。

 

デメリットよりメリットの方が大きいので、古くから、リン酸塩緩衝液はHPLCの移動相として多用されている訳です。カラムメーカー等におけるアプリケーションデータにおいても、LC/MSでないデータについては、リン酸塩緩衝液を用いた例が多いです。

http://www.cerij.or.jp/service/09_chromatography/L-column_application_data/L2129.pdf

http://www.cerij.or.jp/service/09_chromatography/L-column_application_data/L2027.pdf

http://www.kanto.co.jp/products/siyaku/pdf/s_mtyappli201203l.pdf

 

2つのメリットの中でも特に①は重要で、ギ酸や酢酸などの移動相を使うと、カルボニル基が短波長領域に吸収をもつので、210 nm以下の吸収波長での測定は事実上出来ません。リン酸塩緩衝液ではそれが可能になるので、例えば脂肪酸の分析などは、200210 nmの波長で分析できる訳です。

 

弊社が開発中の脱塩インターフェースを使えば、オンライン・リアルタイムでリン酸塩を除去できますので、リン酸塩を含む移動相を用いて、210 nm以下の短波長でUV検出しながらLC/MS分析が可能です。

 

次回は、リン酸塩緩衝液は何故LC/MSに使えないのか。について解説します。

 

 

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祝❗ リン酸塩緩衝液を使うLC/MS受諾分析第一号

昨日は、今開発中の新しい装置(脱塩インターフェース)の試作機を使う受諾分析のために、ある企業様を訪問しました。6月頃から始めて、今回記念すべき初の案件でした\(^^)/

 

受諾分析の詳細は以下をご覧下さい。

リン酸塩緩衝液を用いるLC/MS受諾分析

 

水/アセトニトリル混液に10 mMのリン酸塩を添加した移動相、内径2mmのODSカラム、流量は0.3 mL/min。

 

カラム出口に脱塩インターフェース(試作機)を接続し、その出口をESI-MSへ。

 

オンライン・リアルタイムで移動相中のリン酸塩を除去して、目的成分のマススペクトルを観測できました。

 

マススペクトル上にリン酸あるいはリン酸塩のイオンは観測されなかったので、ほぼ100%のリン酸塩を除去できていたと思います。

 

このインターフェースは、イオン交換によってリン酸塩を除去するのですが、今回の移動相流量に対してイオン交換部の容量が少し大きかったことと、分析目的成分が僅かにイオン交換部に吸着したことで、クロマトグラムのピークにテーリングが見られましたが、目的は達成できたと思います。

 

今まで、ギ酸移動相を使っていた時には見つかっていなかった不純物も見つけちゃったりして❗

 

開発側でなく分析者の立場から、今まで使えなかった移動相が使える、移動相選択の幅が広がる、って本当に良いなぁって、お客様と一緒に測定していて改めて思いました。

 

リン酸塩緩衝液の優位性をLC/MSでも!

 

是非、LC/MSを使う多くの方に実感して欲しいです。

 

 

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